河川

釣行ログ:セイゴ祭りの下に、大きいのはいるのか

秋の入り口。水面のあちこちで波紋が出ていて、表層のルアーにセイゴが続けて出ました。途中で思いついた勝手な想像にしたがって少し深いところを引いたら、サイズが変わりました。あわせて、釣行ログに載せる写真の方針を変えます。

状況

  • 日時: 2026年9月4日 19時頃(小潮)
  • 場所: 河川のオープンエリア
  • 潮: ゆるい上げ

秋らしくなってきました。水面のあちこちで、スィーッ、スィーッ、と細い波紋が走ります。生命感がすさまじい、という言い方がいちばん近い状態でした。

この日の天気(あとから調べたもの)

気象庁の1時間ごとの値で確認しました。水戸地方気象台の観測値です。現場より内陸なので目安になります。

時刻天気気温湿度風向・風速
19時雨23.0 ℃90 %東 1.7 m/s
20時雨22.6 ℃93 %北北東 0.9 m/s
21時雨22.2 ℃90 %東 1.3 m/s

16時38分から、雨が降り続いていました。1時間あたり0.5ミリ以下の小雨です。風はほとんど吹いていません。

マニックで3匹

まず投げたのはデュオ ベイルーフ マニック95(ベイホワイト)。メーカーの製品ページによれば95 mm・8 gで、重心固定のシンキング、フックは#10が2本です。表層を引くための細身のシンキングペンシルです。

1投目でセイゴが出ました。

そのまま流していると、また出ます。3匹ほど上げたところで、反応がなくなりました。

ガルバに替えて4匹

ルアーをダイワ モアザン ガルバ73S(ボラグロー)に替えました。メーカーの製品ページによれば73 mm・12.8 g、有効レンジは水面から0.2メートル、フックは#8です。ショートリップを付けたシンキングペンシルという位置づけの製品で、水面直下をゆっくり引けることを狙って設計されています。

また反応が戻りました。ここで4匹。

合計7匹。セイゴ祭りです。

ふと思いついたこと

7匹目のあたりで、ふとメルヘンな想像が浮かびました。

大きいシーバスは少し深いところにいて、子供たちがワイワイやっているのを温かい目で見守っているのではないか。

根拠はありません。ただ、試すのは簡単でした。

ブルーブルー ジョルティミニ 8 g(#11 ピンクシルバー/オレンジベリー)に替えます。メーカーの製品ページによれば、ジグヘッドが8 g、ワームは3インチのシャッドテール、フックは#8が2本です。

これで少し深いところを引きました。

フッコサイズが3匹。

合わせて10匹で、つ抜けです。

夜の河原に横たえたシーバス。口元にピンクのルアーが見える

セイゴとフッコは、何歳なのか(調べたこと)

サイズで呼び分けてはいるものの、それが何歳なのかを知りませんでした。

シーバスは何を食べているのかで使った水産庁の資料に、播磨灘での年齢別の体長が載っています。

年齢体長
1歳17.8 cm
2歳30.7 cm
3歳38.1 cm
4歳49.5 cm

セイゴと呼んでいるサイズは、だいたい1歳前後ということになります。フッコは2歳から3歳あたり。

同じ記事で書いたとおり、魚食への切り替わりは体長180ミリ前後とされています。1歳のあたりで、甲殻類から魚に変わります。

つまりこの日の前半に出ていたのは、魚を食べはじめて間もない個体だった可能性があります。ただし1匹も測っていないので、これは当てはめただけです。

「大きい魚は深いところにいる」は本当か(調べたこと)

思いつきのほうも調べてみました。

似た形の話は、100年以上前からありました。北海のプレイス(ヨーロッパの平たい魚)を調べたところ、2歳の個体は平均して水深20メートルにいたのに、15歳では約85メートルにいた。1900年代初めの報告です。同じ傾向がタラ、ハドック、ポラック、いくつかの平たい魚でも見つかり、ハインケの法則と呼ばれるようになりました。

数えた研究もあります。MacPherson and Duarte (1991)は、ナミビア沖の大西洋南東部で44種、地中海北西部で31種の底魚について、採れた水深とその場の平均体長の関係を調べました。大西洋で63%、地中海で74%の種に、正の関係があります。

どれくらいの傾きかも出ています。

海域水深が1メートル深くなるごとに、平均体長が伸びる量
大西洋南東部0.09 cm
地中海北西部0.06 cm

100メートル深くなって6センチから9センチ、という程度です。

面白かったのは、この関係が2つの向きの合わさったものだという点でした。深いところに大きいのがいる(bigger-deeper)と、浅いところに小さいのがいる(smaller-shallower)。著者らは両方を比べて、どちらか一方が優勢とは言えなかったと書いています。

例外もあります。エイの仲間(Raja 属)では、むしろ逆に深いほど小さくなる関係が出ました。ウナギ目では関係が弱いままです。

著者らの結論は、この傾向が進化的なもので、受け継がれた行動によるのだろうというものでした。深いところは水温が低く、代謝が下がって長生きできる。その利益で説明しようとしています。

ところが2018年に、この説明そのものが揺れました。

Frankら (2018)が調べたのは、カナダ東スコシア陸棚のタラです。1970年から1989年の調査(標準化した曳網1,691回)では、分布の重心が4歳で水深80メートル、12歳で161メートルと、きれいに深くなっていました。

著者らは、ここに漁獲だけを入れたモデルをぶつけました。

条件結果
水深80メートルまでで漁獲(実際の漁獲圧)観測された深化の72%を説明
漁獲を水深120メートルまで広げる深化のすべてを説明
漁獲なし年齢による深化が出ない

そして、禁漁になってからの実測がこの予測と合いました。1993年の禁漁後、2006年から2016年の調査では年齢別の重心が平均87メートルに揃い、ばらつきは23メートルしかありません。深くなる傾きも、漁獲期の1年あたり10メートルから、1年あたりマイナス1.5メートル、つまり浅くなる側へ変わっています。

残ったものもあります。若い個体(4歳から7歳)には、83メートルから95メートルへの弱い深化が残りました。著者らはこれは個体発生によるものかもしれないとしています。

いちばん効いた一文

Frankらの考察に、こう書かれていました。

大きい魚は、調査したすべての水深に存在する。ただし浅いところでは、小さい魚に比べて密度が低い。

つまり、「大きいのは深いところにいる」ではなく、「大きいのは浅いところにもいるが、薄い」のだということになります。

しかも著者らは、餌は浅いところのほうが多いので、サイズを選ぶ漁獲がなければどの年齢・サイズも浅場の餌を使おうとすると書いています。禁漁後に重心が揃ったのは、それで説明がつく、と。

2本は、正面から食い違っています

この2本は、漁獲で説明できるかどうかについて逆の結論に立っています。

MacPherson and Duarte (1991) も、漁獲や採集の偏りで説明できる可能性を検討はしていました。そのうえで説明にはならないとしています。理由は2つで、浅いところも深いところも同じ漁具で採っていること、そして漁獲圧は陸棚にも斜面にも強くかかっていることでした。

Frankら (2018) が突いたのは、まさにそこです。漁獲は浅いところに集中していて、しかも大きい個体を選んで獲る。それを入れたモデルで、観測された深化が再現できてしまった。

どちらが正しいかを、私は判断できません。1991年の側は2018年の議論に答える機会がありませんし、扱っている海域も魚も違います。同じ現象について、30年をはさんで逆向きの結論が出ている、というところまでです。

この日の話に、どこまで使えるか

ほとんど使えません。理由を並べます。

  • スズキで測られたものではありません。北海のプレイス、大西洋のタラ、地中海と大西洋の底魚です
  • 水深の桁が違います。研究が扱っているのは数十メートルから数百メートルで、この日私が変えたのは、せいぜい数十センチから1メートルです。MacPherson and Duarte の傾きをそのまま当てはめると、1メートル深くして体長が0.9ミリ伸びるという計算になります。当てはめること自体が乱暴だと分かる数字です
  • 1晩の話です。上のどれも、年単位・海域単位の分布の話をしています
  • 釣ったのは10匹です。前半7匹が表層、後半3匹が少し下、という並びに意味があるかを言える数ではありません

思いつきが当たったように見えた、というだけの話です。表層のセイゴが減ったからルアーを替えたのであって、深いところに大きいのがいたから釣れたのか、単に時間が経って状況が変わったのかを、私は分けられません。

それでも、100年ものあいだ法則と呼ばれてきたものが、いまも決着していないというのは知らないことでした。「大きいのは深いところにいる」は、そこまで確かな話ではありませんでした。

写真の撮り方を変えます

逃がした魚はどうなるのかを書きました。リリース後の生存率について、測られている数字を集めた記事です。

書いていて、自分の手順が引っかかりました。

その記事にあるとおり、水から出している時間は10秒未満が望ましく、長くても15秒から20秒とされています。水温が高い日はさらに短くする必要があり、大きい魚ほど短時間で影響が出ます。

写真を撮るというのは、この時間を延ばす行為です。

そこで、釣行ログに載せる写真の方針を変えます。

  • 持ち帰る魚だけ、写真を撮ります
  • それ以外の魚は、写真を撮らずにさっさと戻します

持ち帰る魚なら、撮影のために水から出す時間は問題になりません。逃がす魚については、撮る理由がこちらの都合しかないことがはっきりしました。できれば水から出さずに逃します。

この日の写真は、方針を決める前に撮ったものです。

その後

雨は降り続いていましたが、風がないので苦になりませんでした。秋はこれからです。月見バーガーの広告が始まるとワクワクしてくるのはシーバスアングラーのサガです。

参考

  • 1時間ごとの値 水戸 2026年9月4日(気象庁)— 天気・気温・湿度・風、雨の始まった時刻
  • ベイルーフ(デュオ)— マニック95の全長・重さ・タイプ・フック。サイズのカードを開くと仕様が出ます
  • モアザン ガルバ(ダイワ)— 全長・重さ・有効レンジ・フック
  • ジョルティmini(ブルーブルー)— ジグヘッドの重さ、ワームの長さ、フックの構成、カラー
  • MacPherson and Duarte (1991) “Bathymetric trends in demersal fish size: is there a general relationship?” Marine Ecology Progress Series 71, 103-112— 全文を読みました。大西洋南東部44種・地中海北西部31種、正の関係が見られた種の割合(63%と74%)、傾き(0.09と0.06 cm/m)、bigger-deeper と smaller-shallower のどちらも優勢でないこと、Raja 属の負の関係、漁獲や採集の偏りでは説明できないとする理由、進化的な説明
  • Frank, Petrie, Leggett and Boyce (2018) “Exploitation drives an ontogenetic-like deepening in marine fish” PNAS 115(25), 6422-6427— 全文を読みました。北海のプレイスの2歳20メートル・15歳85メートル、東スコシア陸棚のタラの重心が4歳80メートル・12歳161メートル、漁獲だけで72%を説明できること、漁獲なしでは深化が出ないこと、禁漁後の重心が平均87メートル・幅23メートルに揃ったこと、若い個体に残った弱い深化、大きい魚はすべての水深にいて浅いところでは密度が低いだけであること、餌が多いのは浅いところであること

釣行のオトモ

Primal Scream『Riot City Blues』