河川

釣行ログ:朝の川で、船を眺めていたら

久々の朝マズメ。下げは効いていてイナッコらしき気配もあるのに、一通り投げても出ない。目の前を船が通るのを眺めていたところでヒット。上がってきたのは...

状況

  • 日時: 2026年8月8日 5時頃
  • 場所: 河川のオープンエリア
  • 潮: 下げ

久しぶりの朝マズメでした。普段は夜ばかりなので、だんだん明るくなっていく川を見ながら投げるのは新鮮です。

到着した時点で下げがそれなりに効いていました。水面には小さな群れがちらちら見えて、イナッコらしき生命感があります。

一通り投げて、反応なし

流れは効いている。ベイトらしきものもいる。悪くないように見えました。

レンジとコースを変えながら、表層から底まで一通り探りました。

反応なし。

船が通る

そうやって投げているあいだ、ときどき目の前を船が通っていきました。

眺めながら、ふと思いました。船が通ると、水の中のシーバスはどうなるのでしょうか。驚いて散ってしまうのか、慣れていて気にしないのか。考えたことがありませんでした。

この疑問は帰ってから調べたので、後ろにまとめます。

ヒット、でもまた引きが違う

船を目で追っていたら、ヒット。

使ったのはダイワ モアザン シーバスロデム 14 g(グリーンゴールド)。ジグヘッドとシャッドテールのワームがセットになったルアーで、ジグヘッド単体の重さが14 g、ワームは2.8インチです。

ただ、また引きが違いました。エラ洗いをしません。首を振るというより、体全体で重く突っ張ってくる引き方です。先日のダツとも違う。

寄せてきて水面に浮いた魚体を見て、また「これは何だ」となりました。

河川で釣れたニゴイ。とがって前に突き出した口と、細長い体

ニゴイでした。これも初めて釣りました。

先週はダツ、今回はニゴイ。なんだかゲストに恵まれている夏です。

ニゴイのこと(調べたこと)

名前のとおりコイに似ていますが、コイ科のなかのカマツカ亜科という別のグループです。日本の固有種で、東京都建設局の魚類データベースによれば、河川の中流・下流と汽水域、それに湖に生息し、耐塩性がやや強く、流れのゆるやかな砂底の底のほうに多い魚とされています。

大阪府立環境農林水産総合研究所の淡水魚図鑑には、とがった口で砂を掘ってユスリカなどの小動物を食べたり、付着藻類をこそぎ取ったりする、と書かれています。写真の口の形は、まさにそういう使い方をする形でした。

面白かったのは、川の下のほうで何年も過ごす魚だという点です。筑後川で1986年から1989年に行われた回遊の調査では、感潮域(潮の影響が届く区間)で採れた個体の大半が塩分0.2%未満の水域のもので、若い個体は年間を通してこの感潮域にいました。ここで3〜4年過ごしたあと、春に20〜40 km 遡上して産卵する、という回遊が報告されています。

つまり、シーバスを狙って立っている場所と、ニゴイが暮らしている場所は、かなり重なっているわけです。

なぜルアーに食ってくるのか

砂を吸い込んで小動物を食べる魚が、なぜ7 cm ほどのワームに食ってくるのか。ここは調べていて一番腑に落ちたところでした。

茨城県の水産試験場が霞ヶ浦のニゴイの食性を調べた報告(2006年6月〜2007年7月、307個体)があります。消化管の中身を調べたもので、結果は次のとおりです。

消化管から出たもの未成魚(体長25 cm未満)・餌が入っていた98個体のうちの割合成魚(体長25 cm以上)・餌が入っていた199個体のうちの割合
テナガエビ27.6%55.9%
魚類18.4%33.2%
イサザアミ5.1%5.0%
その他・不明(泥のようなもの)56.1%36.1%

1個体の消化管から複数の項目が出てくるので、縦に足しても100%にはなりません。たとえば成魚のテナガエビの55.9%は、199個体のうち約111個体からテナガエビが出た、という意味です。

大きくなるほどテナガエビと魚を食べる割合が上がっています。さらに月ごとに見ると、8月は成魚の全個体から魚類が出ていて、出現率は100%でした。逆に、調査した6月から12月のうち、テナガエビが出なかったのは8月だけです。

ここで注意が必要なのは、これは湖の話で、しかも1年分の調査だという点です。テナガエビもワカサギも霞ヶ浦にたくさんいる生き物で、報告書自身も「その水域にいる利用しやすい生き物を食べる」という説明をしています。今回釣れた川のニゴイが同じものを食べているかは分かりません。

それでも、大きくなったニゴイが、時期によっては魚をかなり食べる魚であることは確かなようです。小魚の形をしたものを引いてくれば食ってくる、というのは不思議でもなんでもなかったわけです。

小骨が多いという話をあちこちで読んだので、今回もリリースしました。

船が通ると魚はどうなるのか(調べたこと)

朝の疑問のほうです。結論から書くと、満足のいく答えは見つかりませんでした。以下は分かった範囲です。

まず、日本のスズキ(マルスズキ)について、船が通ったときの行動を調べた研究は見つけられませんでした。ですので、以下はすべて別の魚の話になります。

音を出すと、魚は速く泳いで深く潜る

ヨーロッパのスズキ(Dicentrarchus labrax)を屋外の大きな生簀に入れ、水中スピーカーで音を聞かせた実験があります。Neoらの2016年の報告では、音が始まると魚は泳ぐ速さを上げ、深く潜り、群れが密になって、音源から離れる方向に動きました。

同じグループの2018年の報告では、この反応が夜のほうが強く出ること、そして8回繰り返すと深さの変化が小さくなっていくことが示されています。慣れる、ということです。

ただし注意点が2つあります。ひとつは、この魚は名前が似ているだけで日本のスズキとは別の科に属する魚だということ。もうひとつは、聞かせた音が船の音ではなく、杭打ちのような衝撃音だということです。

実際に船が通る海で追いかけたら、差が出なかった

もっと近い設定の研究もあります。地中海の海域で、発信器を付けた8個体を10日間追跡し、同時に水中の音も録音した調査です。近くをモーターボートが通ったことが確認できた録音が79本あり、その前後で魚が「泳いでいる」状態と「隠れている」状態を切り替えたかを調べました。

結果は、船の音のあるなしで差は見られなかったというものでした。著者らは、調査地はもともと船の通航が多く魚が慣れていた可能性と、12分刻みという記録の粗さで捉えきれなかった可能性の両方を挙げています。

慣れについては、マラウイ湖のシクリッドで別の報告があります。船が20〜100 m先を通ると酸素消費量が上がったのですが、それが出たのは船の通航が少ない場所でのことでした。通航の多い4か所では差が出ていません。

結局どうなのか

分かったことをまとめると、こうなります。

  • 音を聞かせれば魚は反応する。速く泳ぎ、深く潜り、離れる
  • ただし、日常的に船が通る場所の魚では、その反応が小さくなる
  • 実際の船で調べた例では、差が出ないこともある

今回の場所は毎日のように船が通ります。それを踏まえると、船が通るたびに散っていると考える根拠は、少なくとも私が見た範囲にはありませんでした。かといって「気にしていない」と言い切れる材料もありません。

さらに、ここで挙げた研究はすべて音だけを扱っています。実際に船が通れば引き波が立ちますし、浅いところでは底が巻き上がることもあります。そちらを測った例は見つけられませんでした。

そして何より、朝のあの一匹が、船と関係があったのかどうかは分かりません。船を目で追っていたら食ってきた、というだけの話です。

その後

ライズも出ないまま、ルアーを替えながらもう一巡しました。アタリなし。

明るくなってきたところで終了です。シーバスの顔は見られませんでしたが、初めての魚が引いてくれたのと、投げながら考えることができたので、楽しい朝でした。

参考

釣行のオトモ

Autechre『EP7』