「水面ざわざわパターン」:上げ潮止まりの短い時合いを獲る
初夏から晩夏にかけて、汽水河川の夜の上げ潮止まりで水面がざわつき、短いチャンスタイムが訪れる経験則。流れがなくても釣れるパターンとして、狙い方と手早く結果を出すためのルアー選びをまとめます。
この記事の見出し
私がホームにしている汽水河川で、ゴールデンウィーク明けから晩夏にかけて繰り返し出会う経験的なパターンがあります。勝手に「水面ざわざわパターン」と呼んでいるもので、夜の上げ潮止まりのタイミングで、なぜか水面がざわざわしはじめ、その短い時間だけよく釣れる、というものです。
再現性が高いので、ここに狙い方をまとめておきます。ただし理由の部分には私の推測も含むので、そこは割り引いて読んでください。
パターンの流れ
だいたい、こういう時間の流れになります。
- 上げ潮止まりの1時間ほど前に釣り場(河川)に入る
- しばらく待っていると、それまで静かだった水面がざわざわしてくる
- そこから15〜30分ほどの短いチャンスタイムが訪れる
- 時合いが終わると、また静かになる
ポイントは、チャンスが短いことです。だらだらと釣れ続けるのではなく、ざわつきが始まってから終わるまでの短い時間に集中してバイトが出ます。だからこそ、事前に入って準備しておくことが効いてきます。

上の写真はまさにこのパターンで出た夏の1本です。使ったのはコアマンの RJ-10(10 g / ピンクパール)をゆっくりめに巻いただけ。特別なことはしていません。このとき流れはほとんどありませんでした。「流れが効くタイミングが時合い」とよく言われますが、このパターンは流れがなくても釣れるケースの一つだと思っています。
ルアー選び:短時間勝負だからこそ
ミノーでもシンキングペンシルでも釣れますが、短時間勝負なので、手っ取り早く結果を出したいならワームがおすすめです。
理由はシンプルで、ワームはただ巻きでも食わせの性能が高く、レンジもゆっくり探れるからです。15〜30分しかないチャンスで、アクションを凝る余裕はありません。写真のRJ-10のようなワーム系を、水面直下〜中層をゆっくり巻いてくるだけで、その日の釣果にたどり着きやすくなります。
ミノーやシンペンで水面〜表層の反応を試して、渋ければワームでレンジを少し入れる、という使い分けもよいと思います。
なぜざわつくのか、なぜ釣れるのか(推測)
正直なところ、理由ははっきり分かっていません。この節は、このサイトのほかの記事で調べたことと、現場の感覚からの推測です。
「潮止まりは釣れない」の例外
海釣りでは、潮止まりは食いが悪く、潮が動く時間帯が良い、とよく言われます。「上げ3分下げ7分」という言い回しもあります。潮汐データで時合いを予測するでも、この考え方を前提にしています。
ただ、夏の夜は、そもそも潮があまり動きません。大洗の潮位データで確かめると、夏の大潮は、夜の潮の動きが昼の半分しかありませんでした(なぜ夏の大潮は夜に潮が動かないのか)。このパターンが出るのは、ちょうどその季節の夜です。潮の動きの大きさだけで時合いを読むと、夏の夜はどの時間も「動かない」側に入ってしまいます。
水面のざわつきの正体
まず、現場で見ている限り、このざわつきは魚やベイトが起こしている動きではありません。ボイルやモジリのような、生き物が水面を破る動きとは明らかに違っていて、水そのものが動いているという見え方をします。
そのうえで私が一番可能性が高いと思っているのは、転流にともなう水の動きです。上げ止まりは、それまで上流へ向かっていた流れが止まり、やがて下げに転じる切り替わりの瞬間にあたります。
汽水の川では、水面近くと底で、水の動きが違うことがあります。那珂川の海門橋で流れを測った研究では、上げ潮のときに、水深1メートルより浅いところは下流へ、それより深いところは上流へ流れていました。水深2メートルより下は海水でした(塩水くさびの記事)。上の川の水と下の海水が、別々に動いているわけです。上げ止まりで、どちらかの流れが先に止まったり向きを変えたりすれば、そのずれが水面に出てくることはありそうです。ただ、上げ止まりの時刻に上下の流れを測った資料は、見つけられていません。
ざわつき自体はベイトの動きではないとしても、流れが変われば、その中にいるベイトの居場所や動き方は変わるはずです。転流によってベイトの位置が動き、それにシーバスが反応する、という順序であれば、短い時合いが立つことの説明にはなりそうです。
底の酸素は関係しているか
汽水湖では、塩水が底に入って水が上下に分かれると、底の酸素が減ることがあります。涸沼で1年間測った信岡ら (2005)では、塩水が湖に入ってから約4日で、湖底から20センチの溶存酸素が1 mg/Lまで下がりました。魚がいられる層が上に限られれば、表層の釣りに有利に働くかもしれない、と考えたことがあります。
ただ、同じ論文では、溶存酸素が低い値になることは、夏のほうが春や秋より少なかったと報告されています。夏は那珂川の流量が増えて、湖に塩水が入りにくくなるためと考えられています。測ったのは湖の中で、私が釣っている川ではありません。夏のこのパターンと底の酸素を結びつける根拠は、いまのところありません。
他の地域・下げ止まりではどうか
「これはこの地域だけのものなのか」も気になって調べましたが、まったく同じ形で語られている情報は見つけられませんでした。ただ、汽水湖・タイダルリバーでトップの時合いが存在すること自体は各地で語られているので、似た現象を別の言葉で経験しているアングラーはいるのだろうと思います。下げ止まりで同じことが起きるかは、私自身まだ十分に試せていません。
まとめ
- 初夏〜晩夏、汽水河川の夜の上げ潮止まりで水面がざわつくことがある
- ざわつきはじめから15〜30分の短い時合い。1時間前には入って待つ
- 流れがなくても釣れるパターン
- 短時間勝負なので、手早さ重視ならワームのゆっくり巻きが有効
- 理由は諸説あり、はっきりとは分かっていない
理由が分からなくても、パターンとして知っていれば釣果は伸ばせます。
使ったもの・参考文献
- 信岡尚道ほか (2005)「塩分浸入に着目した涸沼の環境解析」海岸工学論文集 52, 881-885— 塩水が入ったあと湖底の溶存酸素が下がるまでの日数、季節ごとの低い溶存酸素の出やすさ。全文を読みました
- 海門橋での流れと塩分の観測は、塩水くさびの記事で紹介した高橋らの研究によります