結局、何を優先すればいいのか:38本の記事から順位をつける

潮、場所、ベイト、カラー、サイズ、飛距離、波動。効きそうなものはいくらでもあります。このサイトで調べてきたことを全部並べて、効果が測られている順に並べ直しました。上位と下位で、桁が3つ違います。

この記事の見出し

このサイトでは、潮のこと、ルアーのこと、魚の見え方のことを、1本ずつ調べてきました。38本になりました。

では結局、何を優先すればいいのか。

並べ直してみたら、上位と下位で桁が3つ違いました。この記事はその整理です。

調べて書いた記事のまとめです。元になった記事へのリンクを全部付けてあるので、根拠はそちらで確かめられます。

まず、釣果は掛け算です

順位をつける前に、構造を確認します。

釣れる数 = 遭遇した回数 × 遭遇したときに食う確率

そして、それぞれがさらに分かれます。

遭遇した回数   = 釣りをした時間 × その場所の魚の密度 × ルアーが掃いた面積
食う確率       = ルアーの特性 × 通し方 × その魚の状態

掛け算なので、どこか1つが0になると全部0です。

魚がいない場所なら0。届いていなければ0。この構造が、そのまま優先順位を決めます。

まず0を作らないこと。次に、大きい係数を動かすこと。小さい係数は最後です。

順位

「効果が測られているか」と「測られた効果の大きさ」で並べました。

順位何を測られた効果根拠
1釣りをする時間そのもの論文が「最も効く要素」と名指し統制された実験
2魚がいる場所に立つ浅い場所で釣獲率が有意に高い。場所ごとのばらつきも大きい同上
3届かせる届かなければ0。届くようになれば数倍から数十倍私の計算
4レンジを合わせる潜行深度はリップとラインアイの位置で決まる実験
5多数派から外す個体群の半分が釣られた時点で釣獲率が激減実験
6ルアーの種類種類によって釣獲率に有意差。ただし説明力は中程度実験
7ルアーのサイズ長さを2.5倍にして平均全長が14.6%上がる。大型の釣獲率はルアーが89ミリ以上ならほぼ同じ実験
8カラー単独では差なし。ただし濁りとセットでは効く実験2本が食い違い
9飛距離(面積として)40 mから80 mへ倍にして+9%。20 mから40 mなら+17%私の計算
—波動の強弱測られていないなし

以下、1つずつ根拠を書きます。

1位:釣りをする時間そのもの

唯一、論文が「最も効く」と名指ししたものです。

ウォブリングはスレやすいのかで紹介したパイクの実験は、3232回の15分セッションを積み上げて、何が釣果を決めるかを調べました。結論はこうです。

最も効くのは投じた時間と、場所選びで遭遇確率を上げることであり、気象条件・時間帯・ルアーの種類による追加の効果は中程度にすぎない。

釣り人と場所をランダムに割り当て、2種類のルアーを同じ場所で同時に使った実験の結論が、これです。

そして「良く釣れるルアー」の正体で書いたとおり、釣果の分母は投数です。投げていない時間の釣果は0で、これはどんな道具でも埋まりません。

身も蓋もない結論ですが、いちばん確かな結論でもあります。

2位:魚がいる場所に立つ

同じ実験が、浅い場所での釣獲率が深い場所より有意に高いことを示しています。場所ごとのばらつきも、統計モデルに要素として残りました。その大きさは、釣り人ごとのばらつきより小さいものでした。

もう1つ、飛距離の記事で触れたことがあります。シーバスは回遊します。魚のほうが動いているなら、遭遇を決めるのは魚が通る筋に自分がいたかどうかです。ルアーが掃いた面積ではありません。

このサイトの記事で言えば、「何もない場所」の攻め方、遠浅を攻める、叩かれ尽くした有名スポットが、すべてここに属します。

ベイトについては、効果の大きさを測った資料を持っていません。ただ、捕食者の分布を決めている最上流の変数であることは間違いありません。ここは推測ですが、順位を下げる理由が見つかりません。

潮は、ここに含まれます

潮は「いつ行くか」と「どこに立つか」の両方に効きます。

潮汐データで時合いを予測するで計算したとおり、同じ8月の夜でも、潮の動きに約3倍の差があります。夜間の平均変化速度で、ベストの夜が15.4 cm/h、ワーストが4.8 cm/h。

ただし、これは潮の動きの差であって、釣果の差ではありません。あの記事にも書いたとおり、潮位の変化速度は時合いの候補を出すための代理指標です。潮位変化と実際の流速は同じではありません。

「潮が3倍動く夜は3倍釣れる」とは書けません。書けるのは、動く夜と動かない夜を選べるということだけです。

夏の大潮は夜に潮が動かないという話も、ここに効いてきます。カレンダーの潮名だけを見ていると、夜に動かない大潮を選んでしまいます。

3位:届かせる

ここからが道具の話です。そして最初に来るのは飛距離です。

ただし、飛距離の記事で計算したとおり、飛距離には2つの顔があります。

飛距離の役割飛距離を2倍にしたときの効果
広く探る道具として20 mから40 mで+17%、40 mから80 mで+9%
届くか届かないかのスイッチとして数倍から数十倍。魚が岸からどれだけ離れているかで決まる

魚が岸から平均40メートルに寄っている場合、20メートルから40メートルへ伸ばすと22倍になる計算でした。届いていないなら0だからです。

だから3位は「飛距離」ではなく「届かせる」です。届く範囲に魚がいるなら、そこから2倍に飛ばしても、1時間あたりに探れる面積は1割から2割しか増えません。伸びは元の飛距離で変わり、15メートルから30メートルなら+21%、40メートルから80メートルなら+9%です。

そして届いているかどうかは、投げてみないと分かりません。遠浅の記事に書いた「手前から順に探って、届く範囲を使い切ってから前に出る」が、そのまま答えになります。

風の日は順位が上がります。風向きの記事で計算したとおり、向かい風10 m/sで飛距離は無風の75%まで落ちます。40メートルが30メートルになる。届いていた場所に届かなくなるなら、スイッチが切れることを意味します。

4位:レンジを合わせる

届いても、層が違えば0に近づきます。

リップの記事で見たとおり、潜行深度を決めているのはリップの縦横比とラインを結ぶ位置でした。面積が同じリップでも、幅広にすると潜る力が1.5倍になります。ラインアイの位置は、全長に対して0.21から0.28のあたりで潜行深度が最大になりました。

そして、両立しないものがあります。

  • 深く潜ることと、深さが安定すること
  • 振れ角が大きいことと、深く潜ること
  • 深く潜ることと、ラインアイの設定に余裕があること

つまり、レンジは「選ぶ」ものではなく「ルアーの形が決めている」ものです。レンジを変えたければ、ルアーを替えるか、沈める時間を変えるしかありません。

ただし、どのレンジが正解かは分かりません。状況で変わるからです。言えるのは「レンジは大きく効く軸で、しかも形で決まっている」というところまでです。

5位:多数派から外す

Beukema の1970年の実験が、この順位の根拠です。

水を抜ける池でパイクを釣り続けたところ、個体群のおよそ半分がスピナーで釣られた時点で、スピナーに対する釣れやすさが非常に低い水準まで落ちました。一方、生き餌に対する釣れやすさは変わりませんでした。

パイクの湖の実験でも、7日間の釣りで釣獲率が有意に低下しています。ただしこの実験の効果の大きさの比べ方では、日を追う低下は、6位のルアーの種類より小さく出ています。

この順位を支えているのは Beukema の実験です。スピナーの釣れやすさの落ち方は、この記事の下位にある要素より明らかに大きい効果です。

叩かれた場所の記事に書いた「多数派になっている刺激から外す」は、順位としてはここに来ます。そして重要なのは、これがカラーやサイズより順位が上だということです。

ただし、注意が2つあります。

1つめ。「スレ」には少なくとも2つの別物が混ざっています。スレの記事に書いたとおり、釣られた経験による回避学習と、繰り返しによる順応。強い刺激に対して、この2つは逆の予測を出します。

2つめ。「スレた」と感じているうちのかなりの部分は、単に魚が減っていることかもしれません。バルト海の調査では、釣獲率の差のうちルアー警戒で説明できたのは約3分の1でした。

6位:ルアーの種類

パイクの湖の実験で、ソフトプラスチックのシャッドのほうが、スプーンより釣獲率が有意に高いという結果が出ています。

種類による差は、確かにあります。

ただし、同じ論文が「予測因子の説明力は中程度にとどまった」と書いています。そして時間と場所のほうが大きい、と結論しています。

そしてこの差は、動きの差なのか材質の差なのか音の差なのか、分離できていません。スレの記事に書いたとおり、スプーンとワームは材質・音・光り方・沈下速度・フックの数が全部違います。

7位:ルアーのサイズ

大きいルアーの記事で紹介した実験の結果です。

ルアーを1ミリ長くすると、魚は0.23ミリ大きくなる。ルアーの長さを2.5倍にして、釣れた魚の平均は14.6%増。決定係数は0.07で、ばらつきの93%はルアーサイズ以外の要因でした。

大型 (305ミリ以上) の釣獲率は、ルアーの長さが89ミリから178ミリのあいだではほぼ同じで、いちばん大きいルアーではなく中間サイズのルアーで最大でした。有意な差があったのは、1尾も釣れなかった70ミリのルアーと178ミリのルアーを比べたときだけです (論文の表1。要旨は「ルアーサイズと関係なし」とまとめています)。

大きいルアーがおもにやっているのは、小さい魚を釣らないことです。

小型のバイトに手を焼く場面では有効です。89ミリより大きくしても、大型に出会う回数は増えていません。

8位:カラー

ここは、2本の実験が食い違っています。

ルアーカラーは効くのかで紹介したとおりです。

研究結果
Moraga ら2015 (ラージマウスバス、湖)色による釣果の差なし。明るい色は大きい魚を釣る傾向
Nieman ら2020 (ウォールアイ、エリー湖)濁り方で効く色が入れ替わった。澄んだ水は白、土砂の濁りは黄、アオコは黒

矛盾しているとは限りません。前者は1つの湖で、水の状態で分けずに色だけを比べて差が出ず、後者は水の状態が変わる場所で状態ごとに効く色が入れ替わった。

つまり、色を単独の変数として扱うと差が出にくく、水の状態と組にすると差が出ます。

これは水中カラーシミュレーターが計算していることと同じ方向です。水が変われば残る色が変わるので、効く色も変わるはずだからです。

そして結局どのカラーを選べばいいのかで計算したとおり、確実に釣れる色は分かりませんが、確実に背景に溶ける色は分かります。カラーの順位が低いのは「効かない」からではなく、「効くとしても、それを釣果で確かめる手段がない」からです。

9位:飛距離を、面積として使う場合

3位で書いた「届かせる」とは別の話です。

すでに届いている状態から、さらに飛ばす。これは計算したとおり、40メートルから80メートルへ倍にして1時間あたりに掃く面積は+9%でした。

そして代償があります。80メートルのキャストは1投110秒。20メートルなら35秒です。反応がなかったときに次の手を試すまでの時間が、3倍かかります。

順位がつかないもの

波動の強弱は、測られていません。

ウォブリングとローリングの記事に書いたとおり、釣りで「波動」と呼ばれているものは、測られている量としては振れ角にあたります。そして振れ角が水中でどれだけの水の動きを生むかは、1985年の研究が「正確に計測することは非常に難しい」と書いて以来、測られていません。

ウォブリングとローリングの違いも、順位がつきません。実際のルアーでは2つが同時に起きていて、その割合が体高などで連続的に変わるため、ルアーを2種類に分けられないからです。

リアクションバイトも、効果の大きさは分かりません。動きが変わった瞬間に食う理由で書いたとおり、順応と脱慣化という仕組みは確立していますが、餌の速度変化が捕食を引き起こすことを直接示した研究は見つけられませんでした。

順位が入れ替わる条件

上の順位は、特別な条件を決めていないときの平均的な話です。状況によっては入れ替わります。

状況順位が上がるもの
届いていないことが分かっている飛距離が1位
濁っているカラーの順位が上がる(Nieman ら2020)
毎晩叩かれている場所多数派から外すことの順位が上がる
向かい風が強い飛距離の順位が上がる(向かい風10 m/sで無風の75%まで落ちるため)
遠浅で、魚が岸際に寄る時間帯飛距離の順位が下がる。立ち位置の順位が上がる
水深が50センチしかないレンジの順位が下がる。角度と速度の順位が上がる

最後の行は遠浅の記事に書いたとおりです。レンジを刻める幅がない場所では、レンジは軸になりません。

検証できる順位は、まったく別です

ここが、このサイトでいちばん繰り返してきたことです。

「良く釣れるルアー」の正体で計算したとおり、バイト率1.0%と1.5%を区別するには、2つ合わせて15,500投が必要でした。1回300投の釣行で52回です。

上の順位の下半分は、自分の釣行では一生確かめられません。

40メートルから80メートルへ倍にして+9%という差なら、計算したとおり合計39万投。1日500投で786日です。

ただし、これには抜け道があります。

同じ記事で計算した表です。バイト率が高いほど、必要な投数は減ります。

バイト率1.5倍の差を見分けるのに必要な投数300投の釣行に換算
1% と 1.5%15,494投52回
2% と 3%7,645投26回
5% と 7.5%2,935投10回
10% と 15%1,366投5回

10投に1回バイトが出るような日が続けば、5回の釣行で1.5倍の差を見分けられます。

つまり、道具の比較をするなら高活性の日にやるべきです。渋い日に色を替えて比べても、何も分かりません。渋い日は、上位の要素だけを動かすほうが理にかなっています。

それで、どう組み立てるか

私の結論はこうです。

まず、掛け算の0を潰します。行く。いる場所に立つ。届かせる。レンジを合わせる。ここまでが上位4つで、ここで0を作ると下の努力は全部意味を失います。

次に、その場所の多数派から外します。5位。カラーやサイズより順位が上だということが、この記事で分かったことのひとつです。

そして残りは、好きに選んでいいと思います。

「良く釣れるルアー」の正体に書いたことの繰り返しになりますが、釣果で選ぶという選び方も根拠を持てていません。根拠がないもの同士なら、投げていて気分のいいルアーを選んで構いません。そのほうが長く投げ続けられます。

そして「長く投げ続ける」は、この記事での順位1位そのものです。

この整理の限界

順位は、効果の大きさではなく「測られた効果の大きさ」で付けています。測られていないものは下に来ますが、それは効かないという意味ではありません。

根拠になった実験は、ほとんどがシーバス以外です。パイク、オオクチバス、イワナ、ニジマス、ウォールアイ、フナ、マダイ。シーバスを対象にした釣獲実験は、1本も見つけていません。

淡水の実験が多く、河川・河口・サーフ・港湾という日本の沿岸の条件とは違います。

掛け算のモデル自体が仮定です。実際には要素どうしが独立ではありません。レンジを変えればルアーが変わり、ルアーが変われば飛距離も動きます。リップの記事で見たとおり、動きとレンジは同じ寸法から出てくるので、独立に選べません。

ベイトと季節の効果は、大きさを測った資料を持っていません。順位表に入れられませんでした。上位2つに含まれると考えていますが、これは推測です。

そして、この順位を釣果で確かめる方法はありません。上に書いたとおりです。

元になった記事

順位の根拠になったものを、順位ごとに並べます。

1位・2位

3位・4位

5位・6位

7位・8位・9位