叩かれ尽くした有名スポットで反応を得る:「スレ」の正体をずらす

毎晩ルアーが飛び交う超有名ポイントで、どうすればシーバスの反応を得られるのか。魚が何にスレているのかを分解し、波動・光・レンジ・コース・時間の5つをずらすという考え方をリサーチをもとに整理しました。

誰もが知っている有名ポイント。夜になれば常夜灯の下にアングラーが並び、同じ明暗に一晩で何百投とルアーが通る場所。ここにいる魚は、ルアーを見たことがないほうが珍しいはずです。

そういう場所でどう組み立てるのかを調べてみたら、「スレた魚を釣る」という発想そのものが少しずれていることが分かってきました。今回はそれを整理します。

なお、この記事もリサーチをもとにした整理です。私は人の少ない場所で竿を出すことが多く、激戦区での釣りは避けることが多いですが、自分の釣りの引き出しを増やすためにあえて入ることもあります。

魚は「何に」スレているのか

まず前提として、ルアーが見切られる理由はシンプルです。ルアーはワームも含めて突き詰めればプラスチックの塊で、動きも人間が作ったものなので、魚が違和感を覚えるのはむしろ当然。そのうえで、叩かれ続けた場所では魚が学習していきます。

面白いのは、学習の対象がルアーの製品名ではないという点です。調べた中で説得力があったのは、次の指摘でした。

波動そのものにスレる。 シーバスルアーは強い波動を売りにした製品が多く、多くの人がウォブリング系(ボディを左右に振る動き)を使います。使う人が多ければ、魚は同じ波動を何度も見せられることになり、波動のパターン自体を覚えてしまうというわけです。

フラッシングにスレる。 イワシカラーやボラカラーのようなホロ系は、光を乱反射させて逃げ惑う小魚を演出できる強力なカラーです。ただし使用者が多いぶん、その乱反射自体に慣れられてしまう、と。

この2つは、有名スポット攻略の核心だと思いました。魚は「ルアー全般」を嫌っているのではなく、そこに通っているアングラーが揃って見せている特定の刺激に慣れているだけです。だとすれば答えは一つで、他の人がやっていないことをやればいい

余談:スレた魚は、本物のエサも食べなくなるのか

ここで純粋な興味として気になったのが、ルアーにスレた魚は、本物のベイトを食べるときも警戒して食いが渋くなるのかという点です。もしそうなら「スレた場所の魚は何をしても食わない」ことになりますが、調べてみると、これにきれいに答えている研究がありました。

マダイの稚魚を使った実験(バイオアーカイブで公開されているプレプリント)で、1尾ずつ水槽に入れ、28日間連続で釣り仕掛けを見せ続けたものです。結果はこうでした。

  • 学習は速い。 全個体が1〜2回釣られただけで仕掛けを避けるようになった(平均1.6回)
  • 食欲は落ちていない。 仕掛けを見せる前に必ずペレットを与えて食欲を確認していて、学習後の魚も100%食べた。仕掛けが目の前にある状態でも食べた
  • エサ自体も嫌っていない。 針に付けていたのと同じオキアミを、ラインを付けずに単体で与えると、これも100%食べた
  • 避けているのは「ラインの付いたエサ」だけ。 ラインを付けたオキアミを与えると、食べたのは11尾中1尾(9.1%)まで落ちた(対照群は100%)

つまり答えは、「エサ自体や食欲が落ちるのではなく、ラインが付いているという手がかりを覚える」ということでした。論文でも、これは毒のあるエサを避けるようになる「食物嫌悪学習」とは別のものだと整理されています。魚にとっては当然で、過去に釣られたエサそのものを避けてしまったら、安全なときにも食べ損なって生きていけません。危険なエサと安全なエサを見分けるほうが合理的なわけです。

第三者による目隠しテストでの釣獲率は、学習した群が18.2%、未経験の群が81.8%。釣られにくさが20倍違うという結果でした。

釣り人として一番刺さったのは、次の発見です。学習が進むにつれて、「つつくが針にかからない」回数が増えていった。論文はこれを、魚が仕掛けを避けるだけでなく針にかからずにエサだけ奪う技術を上達させている可能性として書いています。叩かれた場所でショートバイトばかり増えるという現象は、単なる活性の低さではなく、魚の側の熟練の結果なのかもしれません。

他の知見も付け加えると、

  • 完全には避けられない。 学習した魚も平均4.3日で再び釣られました。学習は釣られにくさを大きく上げますが、無敵にはなりません
  • 記憶は長い。 28日間の反復のあと2か月経ってからのテストでも、約半数がラインつきのエサを避けました
  • 見ているだけでも学習する。 コイの研究では、自分が釣られた個体だけでなく、他の個体が釣られるのを見ていた個体でも仕掛けの回避が起きています
  • 大胆な個体ほど釣られる。 同じ研究の続きとして、大胆な個体ほど釣られやすいことが触れられています。叩かれ続けた場所では釣られやすい個体が先に抜かれ、慎重な個体が残る——という選別も働きます

一方で、「食欲は落ちない」が全種に当てはまるとは限りません。カワカマス(パイク)では釣られた経験によってエサへの反応が遅れたという報告が引用されており、こちらは一般的な慎重化(いわゆる「臆病症候群」)に近い話です。実際、ヨーロッパの沿岸ラグーンでの調査では、釣りが自由な区域のパイクはルアーへの反応が慎重になっていることが示されています。

釣りに戻すと:「ラインを意識させない」という軸

この研究は励ましになると思います。魚は食欲を失っているわけではなく、特定の手がかりを覚えているだけ。だとすれば、覚えられていない見せ方を探す価値は十分にあります。

そしてもう一歩踏み込むと、ここには具体的なヒントがあります。魚が覚えているのが「ラインが付いている」という手がかりなら、ラインを意識させない釣りを試すという方向が出てきます。たとえば、

  • ラインテンションをできる限りかけない。 張ったラインは、ルアーの動きを不自然にするだけでなく、ルアーとつながっている「線」の存在をそのまま伝えてしまいます
  • ドリフトの釣りをする。 流れに任せて漂わせれば、ルアーは「引っ張られている物」ではなく「流されている物」になります。ラインを緩めておけること自体が、この釣り方の利点かもしれません
  • ラインを細くする。 単純ですが、意識させる材料を減らす方向です(強度や扱いやすさとのトレードオフになるので、そこは無理のない範囲で)
  • ルアーが先行する角度で通す。 ラインが魚の視界に先に入らないコースを考える

ラインの「太さ」と「素材」と「長さ」

上で「細くする」だけを挙げたのは、太さと素材と長さで、話の確かさが違うからです。せっかく面白い論点なので整理しておきます。

太さについては、細いほど水中で見えにくいという点にほとんど異論がありません。ここは素直に効く方向だと考えていいと思います。

素材は少し込み入ります。光の屈折率は水が約1.33、フロロカーボンが約1.42、ナイロンが約1.53。フロロのほうが水に近いので水中で見えにくいとされ、ライン各社もそう説明しています。この理屈だけを取れば、不透明で色の付いたPEをルアーから遠ざける=リーダーを長くとるのにも一理あることになります。

ところが反論もあって、透明な糸はかえって内部で光を反射してキラキラ光り、目立つという指摘があります。実際、それを抑えるためにあえて染色している製品もあります。また、屈折率の差がどれほどの見えやすさの差になるのかを数値で示した議論は乏しく、そもそも視覚だけでなく側線で太い糸の存在を感じ取っている可能性もあります。

長さはここに乗っかるので、さらに分かりません。シーバスの標準的な組み合わせでは、リーダー(フロロやナイロン)はメインのPEより太いので、長くとるほど太い糸をルアーの近くに増やすことになります。素材の観点では有利で、太さの観点では不利。どちらが勝つかは、はっきり言えません。

そういうわけで、確かなことだけを実践に残すなら「細くする」に絞るのが妥当だと思います。長さについては、根ズレ対策として必要なぶんを確保する、という本来の基準で決めておけばよさそうです。

ここまでの話も含めて、これらは私の推測です。研究が示しているのは水槽の中で「エサにラインが付いているかどうか」を見分けたという事実で、流れの中でラインの張り具合や、太さ・素材の差まで見分けているかは分かりません。

とはいえ、釣行ログに書いた1本は、まさにほぼ巻かずにラインテンションを抜いたドリフトで出たものでした。あのとき効いていたのは「流れに乗った自然な動き」だと思っていましたが、ラインを意識させなかったことも効いていたのかもしれません。理由が2つあるなら、叩かれた場所でこの釣り方を選ぶ根拠は、その分だけ強くなります。

ずらす5つの軸

「他の人と違うこと」と言われても漠然としているので、調べた内容を5つの軸に整理してみました。

1. 波動をずらす

ウォブリング系が飽和しているなら、ローリング主体や、ほとんど動かないI字系に振る。逆に、全員がナチュラル系を投げている場所なら、あえて強波動が効く場合もあります。大事なのは強弱そのものではなく、その場所で多数派になっている波動から外すことです。

2. 光をずらす

ホロのフラッシングに慣れられているなら、マット系(non-holo)、クリア系、ブラックといった、光り方の質が違うカラーを試す。前回の記事で「カラーの優先順位は一番下」と書きましたが、それは同じ光り方の中で色だけ変える話であって、光り方そのものを変えるのは波動を変えるのと同じくらい大きな変更になります。

3. レンジをずらす

みんなが表層を通しているなら一段下、逆にボトムばかり叩かれているなら表層。有名スポットでは「そのポイントの定番レンジ」が確立していることが多いので、定番から外れたレンジは、実は誰も通していないという状況が起こりえます。

4. コースをずらす

トレースコースが少しずれるだけでシーバスが食わなくなる、という指摘があります。裏を返せば、わずかにコースを変えるだけで、そこは誰も通していない場所になるということです。

有名ポイントほど「ここに立って、ここに投げる」という定番の立ち位置とコースが決まっています。1本隣の筋、少し上流から入れて流し込む角度、対岸寄りではなく足元寄り——実際に人が立っていない場所から、人が通していない角度でルアーを入れられないか、と考えてみる価値はありそうです。

5. 時間をずらす

これが一番効きそうだと感じました。詳しくは次の節で。

「魚が集まる時間」より「魚が安心して捕食できる時間」

都市型河川の攻略について、こういう趣旨の解説がありました。狙うべきは魚が集まる時間ではなく、魚が安心して捕食できる時間である、と。

具体例として挙げられていたのが、満潮前後から下げ始めのタイミングです。満潮で岸際まで差したベイトが下げの流れで動き出し、それを追うシーバスが護岸沿いに差してくる。しかも干潮時ほどアングラーのプレッシャーが集中しないため、魚が本来の行動を取りやすい、という組み立てでした。

これは有名スポット全般に応用できる考え方だと思います。多くの人が「一番釣れる」とされる時間に集まるので、その時間は魚にとって最も落ち着かない時間でもあります。セオリー上の best と、実際に魚が口を使う best がずれる——それが激戦区で起きていることなのだと思います。

同じ理屈で、次のような「人が減るタイミング」も候補になります。

  • 定番の時合いが終わって、みんなが引き上げた直後
  • 悪天候の日や、その前後
  • 平日の深夜など、単純に人が少ない時間帯

濁りについては、濁りが入ると警戒心が和らぎ、澄んだ状況では入ってこないような浅場にも寄ってくるという説明が複数見つかりました。雨後の増水と濁りは、激戦区の魚をリセットしてくれる数少ない条件かもしれません。

そもそも、自分でプレッシャーをかけない

ずらす工夫の前に、自分が魚を散らしていないかという視点も重要でした。スレた魚への対策として挙げられていたのは、どれも地味ですが確実なことです。

  • 静かに入る。 足音や物音を立てない
  • ライトを水面に当てない。 ヘッドライトの光が直接水面を照らすと、魚は一瞬で逃げる
  • 手前から探る。 いきなり本命に投げず、少し離れた場所から始めて徐々に近づく

3つ目は、ナイトゲーム入門に書いた「明るい側→境界→暗部の順に探る」とまったく同じ考え方です。手前の魚を散らすと群れ全体が警戒するので、自分の1投目が、その場所を一晩沈黙させることもありえます。人が多い場所では、他人が作ったプレッシャーは変えられませんが、自分が足すプレッシャーは減らせます。

選択肢:そもそも一等地を外す

もう一つ、身も蓋もないけれど有効な選択肢がありました。ある釣具店の解説では、地形が把握できているなら、激戦区の明暗を狙うよりオープンエリアを狙うほうがサイズは出やすいとされていました。

有名スポットが有名なのは、目に見える一等地(明暗、橋脚)があるからです。裏を返せば、目印のない場所は誰も入っていない「何もない場所」の攻め方で書いた「変化は水の下に隠れているだけ」という話は、実は激戦区攻略とつながっていたわけです。

一等地で全員と同じ土俵に立つか、目印を自分で探して誰もいない場所でやるか。後者を選べるようになると、有名スポットの人の多さは問題ではなくなります。

まとめ

  • 魚は「ルアー」にスレているのではなく、多くの人が見せている特定の刺激に慣れている
  • 研究では、スレた魚も食欲そのものは落ちていない。避けているのは「危険を示す手がかり」だけ
  • 手がかりが「ラインの存在」なら、ラインを意識させない釣り(テンションを抜く、ドリフト)を試す価値がある
  • 特に波動のパターンホロのフラッシングは、使用者が多いぶんスレやすい
  • ずらす軸は5つ。波動・光・レンジ・コース・時間
  • 特に時間。「魚が集まる時間」ではなく、魚が安心して捕食できる時間を狙う
  • 濁りや荒天は、警戒心を緩めてくれる条件
  • 自分がプレッシャーを足さない(静かに入る、光を当てない、手前から探る)
  • そもそも一等地を外し、目印のない場所を自分で探すという選択肢もある

「スレた魚は釣れない」ではなく「多数派と同じことをすると釣れない」。そう言い換えると、有名スポットは難しい場所ではなく、他人と違うことを試す価値が最も高い場所ということになります。前回の記事で書いた「カードを使い切ったら、やったことのないことを試す」も、こういう場所でこそ生きるのだと思います。

参考にした研究

参考にした記事

釣行の際はライフジャケットを着用し、立入禁止区域・地域のルールを必ず守ってください。人が多い釣り場では、キャスト前後の安全確認と、周囲のアングラーへの配慮も忘れずに。