ナイトゲーム入門:常夜灯まわりの明暗を釣る

シーバスの最初の1本を狙うなら夜の常夜灯。明暗の境目にできる「食わせのライン」の見つけ方から、立ち位置・流し方・スレさせないアプローチまで解説します。

この記事の見出し

シーバスをこれから始める人に最初におすすめしたいのが、夜の常夜灯まわりです。理由はシンプルで、魚の付き場が目で見て分かるからです。昼間は足元まで追ってきたシーバスにルアーを見切られることも多いですが、夜は魚の警戒心が下がり、ルアーの粗も目立ちにくくなる、とよく言われます。これを確かめた研究は見つけていません。ただ、水の中は思っているより暗い場所です。沿岸の水では、3 m離れただけで光が1割しか残りません(視覚が効かない距離で魚は何を使っているのか)。夜の水の中では、魚にもルアーの細かいところまでは見えていないのかもしれません。

この記事は、私がふだんやっている釣り方をもとに書いています。シーバスをやる人のあいだで広く知られているやり方でもあります。なぜ明暗に魚が付くのか、といった説明も、研究で確かめたものではなく、一般に言われていることの整理です。常夜灯の明るさは常夜灯は何ルクスかで、ライトの当て方はヘッドライトの当て方で、別に調べています。

なぜ明暗にシーバスが付くのか

常夜灯の周りで起きていることを、食物連鎖の順にたどるとこうなります。

  1. 光がプランクトンを集める。動物プランクトンには光に向かう性質(走光性)があり、一部は光の当たる水面付近に出てきます。ただ、夜のアミを深さ別に数えた調査では、表層に出てくるものはいても、密度の中心は夜も底のままでした(アミの記事)
  2. プランクトンを追ってベイト(小魚)が集まる。イナッコやハクなどの小魚が光の中に群れをつくります
  3. ベイトを狙ってシーバスが付く。シーバス自身は明るい場所には出ず、暗い側から明るい側を見上げてベイトを待ち伏せする、と言われています

3つめを確かめた観測は、見つかっていません。南アフリカの河口で投光器を点けた夜と消した夜を比べた研究では、全長50センチを超える魚食魚は点けた夜に増え、照らされた範囲の中で流れに向かってとどまっていました。日本のスズキではなく、調べた場所も1か所だけです。それでも、「明るい側には出ない」とは限らないようです(釣行ログに詳しく書きました)。

暗い側といっても、真っ暗ではありません。常夜灯の明るさを計算した例では、10メートル離れた水面でも、満月の夜の3.7倍の明るさがありました。明暗の境目に見えるのは、光源から離れるにつれて明るさが急に落ちるためで、光源が低いほど境目は鋭くなります(常夜灯は何ルクスか)。

定番の狙い方は、光の中ではなく、明暗の境目の「暗い側」です。この記事も、この狙い方で書いていきます。水面を覗き込める場所なら、光の中に小魚がキラキラしているのが実際に見えるはずです。ベイトが見えるかどうかは、その日その場所で釣りが成立するかの大事なサインになります。

もう一つ重要なのが流れです。明暗があっても水が動いていない場所は反応が薄いことが多く、逆に「明暗×流れ」が重なった場所は一級ポイントになります。橋の下にできる明暗が特別視されるのは、灯りと川の流れが常にセットになっているからです。ポイント選びの段階から「光」と「流れ」の両方をチェックする癖をつけましょう。

立ち位置とキャストコース

覚えるべき原則はひとつだけで、明るい側に投げて、暗い側へ流し込む。これさえ守れていれば、立ち位置は状況に応じて変えて構いません。足場の形、流れの向き、風、先行者の位置によって、通しやすい角度は毎回変わります。

  1. 常夜灯の光が水面に作る境界線を確認する
  2. その境界を、どの角度なら気持ちよく通せるかを考えて立ち位置を決める
  3. 明るい側にキャストする
  4. ルアーが明→暗へ抜けるコースで、流れに乗せてゆっくり通す

境界線と平行に引くよりも、明るい側から暗い側へルアーが「消える」瞬間を作るほうがバイトが出やすい、というのが定説です。暗がりで待っているとされるシーバスの視点で考えると、「目の前の光の中を流れてきたエサが、自分の間合いに入ってきた」という状況を演出しているわけです。

流れがはっきりある場所では、境界より上流側に立って斜め上流(アップクロス)にキャストし、流れに乗せて明暗へ送り込むのが組み立てやすい形です。ルアーが自分から遠ざかりながら暗部へ入っていくので、ラインの存在を魚に気づかせにくいという利点もあります。

慣れてきたら、立ち位置を変えるとルアーの軌道が変わることを意識してみてください。流れの中でルアーはU字を描いてこちらに戻ってきますが、このU字のターンの頂点が魚の目の前に来るように立ち位置とキャスト方向を調整するのが、明暗攻略の核心です。ターンの瞬間は「逃げようとするベイト」の動きに見えるため、バイトが集中しやすいタイミングでもあります。

第1明暗部と第2明暗部

橋の照明が作る明暗には、呼び方があります。流れの上流側にできる明→暗の境界(流れてきたルアーが最初に差し掛かる側)が第1明暗部、橋の下の暗がりを抜けた下流側の境界が第2明暗部です。流れてきたベイトが最初に差し掛かる第1明暗部を狙うのが基本的な気がしますが、第2明暗部でも十分釣れます。第1で反応がないときや先行者がいるときは、迷わず第2も流してみてください。

流れに逆らって引くパターン

逆のアプローチも覚えておくと引き出しが増えます。下流側にキャストして、流れに逆らうようにゆっくり巻いてくる通し方です。流れに乗せて流し込む釣りが定番ではありますが、この引き方でしか反応しない日もあります。

コツはとにかくゆっくり巻くことです。流れを正面から受けているルアーは、リールをほとんど巻かなくても水流だけで十分に泳いでいます。そこへ普通のスピードで巻いてしまうと、本来の動き以上にヒラヒラと泳ぎすぎて、かえって見切られます。イメージとしては「ルアーがその場に留まるか、ほんの少しずつ手前に寄ってくるか」くらいのハンドルスピード。手元にブルブルという振動が強く伝わってくるようなら、巻きすぎのサインです。

流れに頭を向けて定位している小魚や、流れに逆らって耐えているベイトを演出する形になるので、流し込みのドリフトとは違う見せ方ができます。同じ明暗を何度か流して反応がなくなったら、この引き方に切り替えてみてください。

アプローチの順序でスレを防ぐ

いきなり暗部のド真ん中(一番魚がいそうな場所)にルアーを撃ち込むのは避けましょう。手前の魚にラインやルアーが触れると群れ全体が警戒し、ポイントが沈黙します。おすすめは明るい側 → 境界 → 暗部の順に、手前のコースから徐々に奥へ探っていく進め方です。レンジ(泳がせる深さ)も同様に、表層から始めて徐々に深くしていきます。

流れに乗せる「ドリフト」の入り口

明暗の釣りでよく出てくる「流す」「流し込む」という言葉は、ドリフトと呼ばれるテクニックのことです。難しく考える必要はなく、入門段階では次の意識だけで十分です。

  • キャスト後、積極的に巻かない。糸ふけを回収する程度のスローリトリーブで、流れにルアーを運ばせる
  • ルアーが引っ張られてブルブル泳ぐのではなく、流れの中を漂いながら移動している状態を目指す
  • 流れが速い日は重め、緩い日は軽めのルアーに替えて、狙ったレンジをキープする

リールを巻く釣りに比べて手元に伝わる感触が乏しいので最初は不安になりますが、この「何もしていないように見える」流し方こそが、弱って流されるベイトの動きを最も自然に演出します。活性の高くないシーバスにも口を使わせやすい、覚えて損のない技術です。

時合い:時計ではなく潮を見る

「夜なら釣れる」わけではなく、夜の中にも良い時間と悪い時間があります。カギは時刻ではなく潮が動いているかどうかです。

  • 満潮・干潮の前後で流れが止まる「潮止まり」は、ベイトの動きも鈍り反応が出にくい時間帯
  • 逆に、潮が動き出して流れが効き始めたタイミングは、それまで沈黙していた場所で急にバイトが出ることがある

釣行前にタイドグラフを確認して、潮が動く時間帯に釣り場に立てるよう計画するだけで、同じ場所・同じルアーでも結果が変わってきます。当サイトでは、この「潮が動く時間帯」を潮位データから計算する方法を潮汐データで時合いを予測するで解説しています。

最初の1本におすすめのルアー

タイプレンジ使いどころ
フローティングミノー 9 cm前後表層〜50 cmまずはこれ。流れに乗せてゆっくり
シンキングペンシル表層〜1 m(引くと浮きやすい)ミノーで反応がない時のフォローに。ドリフト練習にも最適
バイブレーション1 m〜ボトム冬場や流れが効かない時に

シンキングペンシルは沈むルアーですが、引くと浮き上がって、表層から中層を通ることが多いです。浮かせているのはラインの抵抗です。PE1.2号を水中に10メートル出すと、ラインだけでルアーの側面と同じ面積が水に当たります(シンキングペンシルの沈み方を計算した記事)。

カラーは、澄み潮の常夜灯まわりではシルエットが出すぎないクリア系・ゴースト系が定番とされ、スレた魚には「目立たせる」より「ごまかす」方向が効く、とも言われます。ただ、結局どのカラーを選べばいいのかで、水中で光が来る向きまで計算して総当たりしたところ、魚が下から見上げる向きでは、どの色もほぼ同じ影になり、目立たせるにも紛れさせるにも差がありませんでした。横から見られるときは、晴れや濁った水ならブラック、曇りや澄んだ水ならパールが目立ちました。常夜灯の光に替えても、この結果はほとんど変わりませんでした。表層を引く明暗の釣りでは、色の差は思っているより小さいのかもしれません。

釣れない時のチェックリスト

  • そもそも光の中にベイトは見えるか?(見えなければ移動を検討)
  • 流れは効いているか?潮止まりではないか?
  • コースは明→暗になっているか?境界と平行に引いていないか?
  • レンジは表層から順に落としてみたか?
  • 立ち位置を変えて、U字の頂点の位置をずらしてみたか?
  • 同じ場所に粘りすぎていないか?(常夜灯は他にもある。ランガンも有効)

夜釣りのマナーと安全

  • 水面をライトで照らさない。光が魚を散らす、とよく言われますが、実験で確かめたものは見つかりませんでした。はっきりしているのは自分の目のほうで、暗さに慣れるまで20〜30分かかり、数秒の点灯でそれが崩れます。光に向かって突っ込んでくるダツという魚もいます(ヘッドライトの当て方)。手元の作業は水辺から離れて行い、先行者がいる場合はなおさら配慮を
  • 先行者がいるポイントには黙って割り込まない。挨拶と距離感が、狭い明暗ポイントでは特に大事です
  • 橋の上にミスキャストしない。通行人がいる可能性もあり、非常に危険です
  • ウェーディングで入水する場合、慣れないうちは膝下までにする(これ以上の深さには入らないというルールを自分の中に作っておく)
  • エイのいそうな浅場は、すり足で歩く。エイは体の真ん中を押さえつけられると刺し、縁を押されただけではほとんど刺さなかった、という実験があります。ただし別の種を水槽で調べた結果です(エイの記事)
  • ライフジャケットは必ず着用。夜間の単独釣行では、行き先と帰宅予定を家族に伝えておきましょう
  • 初場所では明るいうちに下見をしておく(特にウェーディングする場合)
  • 立入禁止区域・地域のルールは必ず守る

常夜灯まわりは手軽な分、魚も人も集まる場所です。「静かに入って、静かに釣る」が結果的に一番釣れる、と覚えておいてください。

地点と日時を入れるだけで、潮が動く時間帯を計算できる潮見アプリも用意しました。