バーブレスフックはバレやすいのか:取り込める数は減りうるが、外す時間は短くなる
返しのないバーブレスフックは、魚にやさしいがバレやすい、と言われます。返しのある針とない針を比べた研究を並べると、取り込める数が減った研究と、差がなかった研究がありました。針を外す時間は、どの研究でも短くなっていました。
この記事の見出し
釣り針の先には、ふつう、抜けにくくするための小さな返し(バーブ)が付いています。この返しをつぶした、あるいは初めから返しのない針を、バーブレスフックと呼びます。
バーブレスは、魚を傷つけにくく、外しやすい。その代わりバレやすい、と言われます。本当にそうなのか、研究を並べて確かめました。
調べて書いた記事です。シーバス(スズキ)で返しの有無を比べた研究は見つけられなかったので、ほかの魚の研究を使っています。
先に結論を書きます
- 返しをなくすと、取り込める数が減った研究があります。餌釣りで、返しのある針のほうが22%多く取り込めた、という結果です
- 差がなかった研究もあります。経験のある釣り人では差が出にくい、と言われています
- 針を外す時間は、どの研究でも返しのないほうが短くなりました
- 魚が死ぬ割合は、返しの有無ではほとんど変わりませんでした。マスの研究をまとめた解析では、返しありで4.5%、なしで4.2%でした。死ぬ割合に効くのは、針がどこに掛かったかのほうです
取り込める数は、減りうる
餌釣りで、返しありのほうが22%多く取り込めた
Schaeffer and Hoffman (2002) は、アメリカ・フロリダの沖、メキシコ湾の岩場や漁礁で、返しのある針とない針を比べました。1996年と1997年の7回の釣行に、42人のボランティアの釣り人が参加しています。ほとんどが釣りの経験の少ない人でした。釣り人には、1日の半分を返しのある針、残り半分を返しのない針で、餌を使って釣ってもらっています。
釣れたのは15種479尾で、ほとんどが35センチ未満の魚でした。結果は次のとおりです。
| 比べたこと | 返しのある針 | 返しのない針 |
|---|---|---|
| 1人が取り込んだ数の平均(尾) | 6.0 | 4.9 |
| 1尾の針を外すのにかかった時間の平均(秒) | 16.1 | 6.6 |
- 取り込めた数は、返しのある針のほうが22%多くなりました。掛けたあとに逃げられる割合が、返しのない針で高かったためです
- 餌を取られる割合、1時間あたりに掛かる数、釣れた魚の大きさは、針で変わりませんでした
- 針を外す時間がいちばん長くかかった魚でも、返しのない針では4割短くなりました
- 針の掛かった場所は、針で変わらず、ほとんどがあごでした
論文は、この釣りでは返しをなくしても魚が死ぬ割合はおそらく減らず、わずかな得の代わりに釣果を減らした、とまとめています。
地中海の餌釣りでも、返しありのほうが多く釣れた
Alós ら (2008) は、2007年7月、地中海のマヨルカ島の湾で、いろいろな魚が釣れる餌釣りを使って、針の大きさ(12号と8号)と返しの有無を比べました。経験が同じくらいの釣り人4人に、虫餌で30分ずつ、同じ場所で同時に釣ってもらっています。
ここでも、返しのある針のほうが多く釣れました。30分で1人あたり、12号で7尾、8号で9尾多く釣れています。
針を外す時間は、返しのない針のほうが短くなりましたが、差は1秒あまりでした。
| 針 | 1尾の針を外すのにかかった時間の平均(秒) |
|---|---|
| 12号・返しあり | 6.5 |
| 12号・返しなし | 5.3 |
| 8号・返しあり | 4.6 |
| 8号・返しなし | 3.9 |
針がのどの奥に掛かる割合に効いていたのは、針の大きさのほうで、返しの有無ははっきりした違いを生みませんでした。論文は、返しをなくすと外す時間はわずかに短くなるが、釣れる数が大きく減るので、魚を守るうえでの得はほとんどない、とまとめています。
差がなかった、という報告もある
一方で、差がなかった、という研究もあります。Schaeffer and Hoffman (2002) の論文のページで引用されている別の研究は、腕前のそろった経験のある釣り人に釣ってもらい、返しのある針とない針で取り込める割合に差は見られなかった、と書いています。どの針でも、取り込めた割合は90%を超えていました。
結果の違いは、釣り人の腕の違いで説明されることがあります。Schaeffer and Hoffman (2002) の釣り人は、ほとんどが経験の少ない人でした。釣りの解説では、返しのない針は、糸がたるんだときに抜けるので、糸を張り続けられる釣り人なら差はほとんど出ない、と言われます(Troutbitten の解説)。
ただ、Alós ら (2008) は経験の同じくらいの釣り人を使っていて、それでも返しのない針で釣れる数が減っていました。腕だけで説明できるわけではなさそうです。釣る魚や、餌かルアーかでも変わるのかもしれません。
外す時間は、短くなる
取り込める数とは違って、針を外す時間については、研究の結果がそろっています。返しのない針のほうが、早く外せます。
ルアーで確かめた研究があります。Trahan ら (2021) は、カナダの湖と川で、パイク、スモールマウスバス、ラージマウスバスの572尾を、クランクベイト、ジャークベイト、リップレスクランクベイトで釣りました。それぞれのルアーに、次の4通りの針を付けています。
| 針の種類 | 説明 |
|---|---|
| トレブルフック・返しあり | ルアーに初めから付いている針 |
| トレブルフック・返しなし | 上の針の返しを、ペンチでつぶしたもの |
| シングルフック・返しあり | 1本針に付け替えたもの |
| シングルフック・返しなし | 1本針の返しを、ペンチでつぶしたもの |
3種のどの魚でも、どのルアーでも、針を外す時間がいちばん長かったのは返しのあるトレブルフック、いちばん短かったのは返しのない1本針でした。
返しをつぶしたトレブルフックは、深く掛かることがあった
ただし、この研究には、返しをなくすことの意外な面も出ています。スモールマウスバスでは、返しのないトレブルフックが、いちばん深い場所に掛かっていました。掛かった場所がえらやのどなど傷つきやすい場所になることも、返しのない1本針より多くなっていました。
論文は、返しをなくすことの得は、魚によってはほとんど見られず、いちばん効いたのはトレブルフックを1本針に替えることだった、とまとめています。
この研究は、取り込めた数や、掛けてから逃げられた数は比べていません。論文自身が、返しの有無で取り込める割合が変わるかを、次に調べるべきだと書いています。
魚が死ぬ割合は、ほとんど変わらない
返しのない針は魚にやさしい、と言われますが、魚が死ぬ割合で比べると、差はほとんどありません。
Schill and Scarpella (1997) は、川や湖に住むマスで、返しのある針とない針を比べたこれまでの研究をまとめて解析しました。比べた11組のうち、死んだ割合にはっきりした差が出たのは1組だけでした。それも餌釣りで、比べた針の大きさがそろっていなかった組です。ルアーの研究は、どれもトレブルフックでした。
針が原因で死んだ割合の平均は、毛針とルアーを合わせて、返しのある針で4.5%、返しのない針で4.2%でした。ルアーだけでは返しのある針がわずかに高く、毛針だけでは逆でした。研究ごとの結果を合わせた解析でも、毛針、ルアー、その両方のどれで見ても、差は偶然と区別できませんでした。
論文は、毛針とルアーのマス釣りで返しを禁じる規則には、魚を守るうえでの根拠がなく、釣り人の気持ちの問題だ、と書いています。
逃がした魚はどうなるのか:どこに掛かったか、何秒空気にさらしたか、どう掴んだかで書いたとおり、魚が死ぬかどうかを最も大きく左右するのは、針がどこに掛かったかです。口の前のほうに掛かった魚は、返しがあってもなくても、ほとんど死にません。のどやえらに掛かったときに、外す手間と時間が効いてきます。
釣りにどう効くのか
並べると、こうなります。
| 比べたこと | 返しをなくすと |
|---|---|
| 取り込める数 | 減った研究と、差がなかった研究がある |
| 針を外す時間 | 短くなる。ただし差は研究で大きく違う(16秒→7秒、6.5秒→5.3秒) |
| 魚が死ぬ割合 | ほとんど変わらない |
| 掛かる深さ | トレブルフックでは、深くなった魚がいた |
返しをなくすと、確かにバレやすくなりうるが、その差は釣り人の腕と、糸を張り続けられるかで変わる。一方で、外す時間は確実に短くなる。それが、今ある研究から言えることです。
魚を逃がすつもりなら、返しをつぶすより、トレブルフックを1本針に替えるほうが、効き目ははっきりしています。ただし、1本針に替えると、ルアーの動きや、掛かる確率も変わるかもしれません。それを比べた研究には、当たっていません。
確かめられていないこと
シーバスで返しの有無を比べた研究は、見つけられませんでした。シーバスは、掛かると水面で頭を振る(エラ洗い)ことで針が外れやすい、と釣り人のあいだで言われる魚です。ほかの魚と同じ結果になるかは分かりません。
取り込める数の研究は、どれも餌釣りです。ルアーで、返しの有無と取り込める数を比べた研究は、見つけられませんでした。
差がなかった研究の書誌には、当たれていません。Schaeffer and Hoffman (2002) の論文のページに引かれている文章として読みました。
取り込める数の研究に出てくる魚は、どれも35センチ前後までの小さめの魚です。大きなシーバスと同じかは分かりません。
続けて読むなら
- 逃がした魚はどうなるのか:どこに掛かったか、何秒空気にさらしたか、どう掴んだか— 針の掛かった場所と、魚が死ぬ割合
- アカエイは汽水にもいるのか:塩分への強さと、ウェーディングで刺されないために— 釣れてしまったエイの釣り針の扱い
使ったもの・参考文献
- Schaeffer, J. S. and Hoffman, E. M.「Performance of barbed and barbless hooks in a marine recreational fishery」(North American Journal of Fisheries Management 22, 2002)— 本文を読みました。42人の経験の少ない釣り人、1人あたり取り込んだ数(6.0尾対4.9尾)、外す時間(16.1秒対6.6秒)、掛かった場所
- Alós, J., Palmer, M., Grau, A. M. and Deudero, S.「Effects of hook size and barbless hooks on hooking injury, catch per unit effort, and fish size in a mixed-species recreational fishery in the western Mediterranean Sea」(ICES Journal of Marine Science 65, 899-905, 2008)— 本文を読みました。経験の同じくらいの4人、返しのある針で30分あたり7〜9尾多く釣れたこと、外す時間の表、のどに掛かる割合に返しの有無が効かなかったこと
- Trahan, A., Chhor, A. D., LaRochelle, L., Danylchuk, A. J. and Cooke, S. J.「Influence of artificial lure hook type on hooking characteristics, handling, and injury of angled freshwater gamefish」(Fisheries Research 243, 106056, 2021)— 本文を読みました。572尾、3種のルアーと4通りの針、外す時間、返しのないトレブルフックが深く掛かったこと、取り込める割合は比べていないこと
- Schill, D. J. and Scarpella, R. L.「Barbed hook restrictions in catch-and-release trout fisheries: a social issue」(North American Journal of Fisheries Management 17, 873-881, 1997)— 本文を読みました。11組の比較、ルアーはすべてトレブルフック、死んだ割合の平均4.5%対4.2%、合わせた解析で差がなかったこと、規則は気持ちの問題だという結論
- Q&A: Barbless Hooks or Barbed? Does It Matter?(Troutbitten)— 糸を張り続ければ差は出ない、という釣り人の経験則。釣り人向けの解説です