アミはどこにいるのか:夜に上がるのではなく、夜に散らばる

河口の潟湖で、アミの数を表層・中層・底層に分けて3時間おきに数えた調査があります。夜に表層へ出てくるのは確かでしたが、密度の中心は夜も底のまま。上がるのではなく散らばっていました。あわせて、アミが確認された月にどのルアーと操作で食ったかの記録も並べます。

この記事の見出し

シーバスは何を食べているのかで、東京湾奥の3月の主役がアミだったこと、播磨灘では当歳魚の主食が甲殻類だったことを書きました。

では、アミはどこにいるのか。

ベイトはなぜそこにいるのかでは、水がベイトを集める仕組みを4つ挙げました。その4つめが「潮に合わせて上下に動いて位置を保つ」で、その効果がはっきり出ていたのがアミ類でした。今回はそのアミ自体を見ます。

調べて書いた記事です。

居場所だけでなく、攻め方にも触れます。ただしこちらも、記録が残っている調査に基づいて書きます。

その前に、アミとは何か

アミはエビではありません。軟甲綱アミ目に属する別の仲間で、体長は1センチ前後。ニホンイサザアミは16ミリに達すると図鑑に記載があります。

汽水域には複数種がいます。今回の資料が扱っているのは2種です。

学名この記事で使う和名分布の傾向
Neomysis awatschensisクロイサザアミより上流側
Neomysis japonicaニホンイサザアミより河口寄り

和名の対応は資料によって食い違います。N. awatschensis をイサザアミと呼ぶ資料もありますし、N. japonica をニホンアミと呼んだ古い論文もあります。また N. intermedia という学名で書かれた研究がありますが、これは N. awatschensis と同じものとして扱うのが一般的とされています。この記事では、下に挙げる片山らの表記に従います。

調査の中身

片山知史・玉城泉也・大方昭弘 (2011)、水産海洋研究に載った論文です。

項目内容
場所名取川の河口にできた潟湖「広浦」(宮城県)
定点奥部の浅い側 (水深1.0〜2.0 m) と入り口側 (水深2.8〜3.9 m) の2箇所
時期5月。大潮のとき54時間、小潮のとき30時間
間隔約3時間おき
層表層・中層・底層に分けて採集
同時に測ったもの塩分、水温、照度、流速、流向

3時間おきに、丸2日以上、層を分けて数え続けています。潮位も塩分も照度も同時に測っているので、何と連動しているかを相関で調べられる形になっています。

昼は底。夜も底。ただし夜は上にも広がる

結果です。推定された分布密度の範囲を並べます。

種表層と中層の密度 (個体/m³)底層の密度 (個体/m³)底層の最大値 ÷ 表中層の最大値
クロイサザアミ0〜31.50〜252.88.0
ニホンイサザアミ0〜43.00〜1231.328.6

桁が違います。表中層でいちばん濃いときでも、底層でいちばん濃いときの8分の1から29分の1です。

さらに、表中層はほとんどの時間帯で密度が0でした。数が立ち上がるのはいくつかのピークのときだけです。いっぽう底層は、54回の採集のうち0になったのはクロイサザアミで6回、ニホンイサザアミで14回だけでした。

そのピークが夜に来ます。昼間はほとんど分布していなかった中層と表層に、夜間は分布するというパターンで、これは大潮でも小潮でも認められました。

ここで著者らは、そのまま「夜に浮く」とは書いていません。

両種とも夜間においても底層に多く分布したことから、昼間は底層、夜間は表中層に分布するということではなく、夜間には遊泳が盛んになりアミが表層と底層を頻繁に行き来するために分布層が表中層にまで広がったものと考えられる、と書いています。

上がるのではなく、散らばる。密度の中心は夜も底にあって、その一部が上まで届いている、という絵になります。

上ずるのは、照度が下がったときでした

何が効いているのかを、相関で調べています。

説明変数は水温・塩分・照度・流速の4つ。目的変数は種ごとの分布密度。データセットは調査 (大潮・小潮) と定点の組み合わせで6つあります。

種表層中層の密度と照度に有意な負の相関が出たデータセット
クロイサザアミ6つのうち3つ
ニホンイサザアミ6つのうち2つ

いずれも係数は負で、照度が弱いときに表層中層の密度が高くなります。流速とは、どのデータセットでも有意な相関がありませんでした。

現場の照度はこうなっていました。昼間は5000ルクス以上、主に21時から2時の夜間は0。ただし5000ルクスというのは使った照度計の上限で、それ以上は5000として記録されています。

ここで、常夜灯は何ルクスかで計算した数字を並べてみます。

場面水面付近の照度 (lx)
この調査の昼間5000以上 (計器の上限)
常夜灯の真下 (計算値)5.6
常夜灯から10 m離れた水面直下 (計算値)0.36
この調査の21時から2時0

常夜灯の真下は、昼間の1000分の1以下です。ただし、この調査で夜間として記録された0とは、まったく違う明るさです。

アミが上ずる側と上ずらない側の境目がどこにあるのかは、この論文からは出てきません。照度計の記録が5000と0の2値に近い形になっているためです。常夜灯の下でアミが上ずるかどうかは、分かりません。

ピークの時刻が、潮回りでずれました

面白かったのがここです。

大潮のときは、ピークがすべて22時台でした。小潮のときは、すべて2時台でした。

照度だけで決まるなら、時刻はどちらもだいたい同じところに来ます。ずれたということは、照度以外のものが効いています。

著者らは、昼夜の分布層の変化には照度に加えて、潮汐に伴う複雑な水塊の変化も影響していると述べています。

ただしこの調査自体では、流速との有意な相関は出ていません。流れが効いているかどうかは、この論文では決着していません。

別の海の、別の種で、同じ結論が出ています

片山らが引いていた Sato and Jumars (2008) を読みました。まったく違う場所と種で、同じ形の結論に着いています。

項目内容
場所アメリカ、メイン州のダマリスコッタ川の河口。水深10から15 m、平均潮差およそ3 m
時期2005年の秋 (10月から11月) と、2006年の夏 (7月から8月)
方法多周波の音響測深機2台。265 kHzから3 MHzで、12.5センチ間隔で水柱を測る。流速はADCPで同時測定
対象Neomysis americana。2006年夏のトラップで採れたものの89%以上を占め、平均体長6.8ミリ

片山らはネットで採って数え、こちらは音で測っています。種も海も違います。

上がるのではなく、散らばる

要旨に、こう書かれています。この種の出現は、集団の大半が底から遠く離れる移動としてではなく、分布の縦方向の広がりとして捉えるのが最も適切である。出現中でさえ、ほとんどの個体はほとんどの時間を底の近くで過ごした。

片山らの表現とほぼ同じです。「夜間には遊泳が盛んになりアミが表層と底層を頻繁に行き来するために分布層が表中層にまで広がった」。

方法も場所も種も違う2つの調査が、同じ結論に着いています。この記事の柱にしている「上がるのではなく散らばる」は、1本の論文だけの主張ではありません。

さらにSatoらは、それまでの音響研究がアミの量を大きく過小評価していたとも書いています。底のすぐ上に高い密度で集まっている部分を、測れていなかったためです。

速い流れのときは、高く上がりません

片山らはSatoらを引いて、強い流れが生じている場合は夜間でも表中層に分布しないと書いています。原文を読むと、区別が1つ落ちています。

原文はこうです。干潮の憩流 (下げ潮が止まるとき) の近くで出現したアミは、水柱を速やかに上昇し、表層近くにも達した。上げ潮の流れが強い時間帯の近くにもアミは出現したが、底から高くは上がらなかった。

速い流れでも出てはきます。高く上がらないだけです。著者らは、動物が反応する流速の閾値がある可能性を指摘しています。

いっぽう「表層まで届くのは干潮の憩流のときだけで、最も速い流れの時間帯を系統的に避けた」という記述は、アミではなく、それより小さいサイズ (カイアシ類の大きさ) について書かれたものです。

片山らの要約は、この2つを分けていません。孫引きで読んでいたら気づけない差でした。

秋になると、リズムが入れ替わります

もう一つ、季節の話があります。

時期優占するリズム
夏24時間周期。暗くなりはじめると出現が始まる
秋 (出現期の終わり)12.4時間周期。潮汐のリズムに移る

同じ種が、季節でリズムを替えます。

そして秋には、潮に乗る動きがはっきり出ます。干潮の憩流のときに表層へ上がれば、河口から流し出される危険を抑えたまま、餌の多い水に届く。その後の上げ潮で、上流へ運ばれます。底の近くでは、上げ潮を積極的に使って水平に移動していると著者らは述べています。

ベイトはなぜそこにいるのかで、水がベイトを集める4つめの仕組みとして「潮に合わせて上下に動いて位置を保つ」を挙げました。その具体例が、これです。

真夜中に沈む理由

最後にもう一つ。アミの出現には「真夜中の沈降」という現象が知られています。日没直後や夜明け前に比べて、真夜中は表層近くの個体が少なくなる、というものです。

Satoらは、2週間の連続記録から、この現象が24時間周期と12.4時間周期の2つが夜間に重なった結果として説明できると述べています。

夜のあいだ一様ではなく、時間帯で濃さが変わるということになります。ただしこれはメイン州での話で、日本の河口で同じ重なり方をするかは分かりません。

塩分が20倍以上振れる場所に住んでいます

調査地の塩分は、潮汐に伴って大きく変動しました。観測された範囲は1.5から33.4です。22倍以上の幅があります。

大潮のときは干満差が1.9メートル、小潮のときは1.2メートル。特に大潮のときは、塩分の低い水が底層まで及んでいました。

ベイトはなぜそこにいるのかで、河口の低塩分域に濁りとプランクトンの極大が重なるという話を書きました。アミはその塩分の振れ幅の中で暮らしていることになります。飼育実験でも両種とも広い塩分耐性を持つことが報告されている、と論文に書かれています。

2種は、動き方が違います

同じ場所に共存している2種ですが、振る舞いに差がありました。

底層から消えることが、ニホンイサザアミのほうが多い。54回中14回で、クロイサザアミの6回より多い。著者らは、潮汐に合わせて水平的に移動していることが考えられるとしています。

成熟段階の分布も違います。クロイサザアミは表層中層で未成熟個体の割合が高く、胃が満たされた個体の割合は底層で高い。採集層による差が統計的に有意でした。いっぽうニホンイサザアミは、雌雄・成熟段階も胃の充満度も、層による有意な差がありませんでした。

分布そのものにも差があります。クロイサザアミのほうが上流側という報告が引かれています (Suzuki et al., 2009)。

同じ「アミ」でも、種が違えば居場所も動き方も違うことになります。

釣りに引き寄せると

夜に表層でアミが見えることと、アミが表層に移動したことは、同じではありません。密度の中心は夜も底にあります。

表層に見えているのは、全体のごく一部です。表中層の最大密度が底層の8分の1から29分の1だったことを思い出すと、水面でアミが見えている夜は、底にはその何倍もいることになります。

上ずる時刻は、潮回りで変わります。この調査では大潮が22時台、小潮が2時台。日没からの経過時間だけでは決まりません。

アミがいる場所と、アミが上ずっている場所は、別の問いです。前者は塩分と地形の話で、後者は照度と潮の話になります。

なお、これらはすべて論文が示した観測から私が引き出した読み方であって、釣果と結びつけて確かめられたものではありません。

攻め方:記録が残っている3月

ここからは山田 (2011)です。東京湾奥で、月ごとにどのルアーのどの操作で食ったかを回数で記録した調査です。

3月を使います。この月は吐瀉物の大半がアミを中心とするプランクトンだったと確認されているうえ、アミの発生も目視で確認されています。餌がアミだと独立に分かったうえで、ルアーの記録があるので、シーバスは何を食べているのかで指摘した「ルアーの反応から餌を推定する」循環が起きません。

記録はこうです。

項目3月の記録
捕食を得た回数7回 (3回の調査で)
捕食を得たルアー1種類のみ。ジャクソン ピンテールチューン6(サイズ:55 mm, 自重:6 g)。調査に使った25種類のうち最も小さいもの
捕食を得た操作1種類のみ。流れに乗せて流し込み、そこから引いてくる操作で7回すべて
効かなかった操作ジャーキング、速めのリトリーブでは捕食を誘発できなかった
場所夜の橋の下などにできる明暗部の境目
反応した範囲1メートル四方ほどの狭い範囲に限定された
食い方弱々しくルアーを咥えるものばかりだった
色透明なルアーへの反応が良好だった

7回です。3回の調査、1年分、1海域。この数字で断定はできません。

何と比べたうえでの1種類なのか

「1種類だけ効いた」は、何を投げたうえでの1種類かが分からないと意味を持ちません。論文は25種類を6つのカテゴリに分けています。

論文のカテゴリ含まれるルアー (論文の表記)3月に捕食を得たか
シンキングペンシルMarib、Rolling bait、Yore yoreなし
シンキングペンシル (細身)Yarukiba、Wonder slim70、Manic、Rise、Grasshopper、Yaruki stickなし
フローティングミノー (10 cm超)TKLM、Komomo counter、KomomoⅡ、Sardina107なし
フローティングミノー (10 cm未満)Komomo slim、Komomo slim tuned、SasukeSF95なし
シンキングミノー (10 cm未満)Brast、Brast65、X80SW、Pintail tune6、Su-sanPintail tune6 のみ7回
バイブレーションSlight edge、Bay slag、Range vib、Slideなし

Pintail tune6 は、シンキングミノーのカテゴリの中でも、25種類全体でも最も小さいものと本文に書かれています。動きの分類はウォブンロール (ウォブリングとローリングの中間) です。

カタカナは、論文の英字表記をそのまま読んだものです。メーカー名や、いま販売されているかは確認していません。2010年の調査なので、入手できないものが含まれている可能性があります。

この表は「これを買えばいい」という意味ではありません。7回の記録です。同じカテゴリの4種類には捕食がなかったという事実も、同じ7回の中の話です。

なぜ流すのか

山田は、この時期を動きの小さなアミが大量発生し、それが潮流に乗って流れてくるのをスズキが流れの中に定位して待っている状態と推測しています。

ベイトはなぜそこにいるのかで、プランクトンは横方向に流れへ逆らい続けられるほど泳げないと書きました。アミは体長1センチ前後です。流されるものとして扱われている。

だとすれば、ルアーが流れに逆らって動いた時点で、餌の動きから外れます。ジャーキングや速いリトリーブで反応がなかったことと、向きが合います。これは私の解釈で、確かめたものではありません。

透明が効いた理由:実験があります

山田は、透明なルアーへの反応が良好だった理由として、色素が沈着していない、あるいは非常に少ないアミ・エビ・仔魚を食べてきた履歴による学習行動の可能性を挙げ、岡本ら (2001) を引いています。そして自身の調査でもこの傾向は顕著に認められた、と書いています。

その岡本らの論文を読みました。スズキを使って、ルアーの色の選択を調べた実験です。

まず方法です。万瀬川でルアーで釣った体長16.4センチから20.7センチのスズキ10尾を屋外の水槽に入れ、ビニールシートで囲いを作って背景色を白・赤・緑・青に変えます。擬餌は長さ19ミリ・直径4ミリのペレットで、白・赤・緑・青・透明の5色。各色5個ずつ計25個を同時に水面へ投入し、各背景色について20回繰り返しています。

結果です。擬餌の色ごとに、擬餌に突進した回数を合計したものです。論文の呼び方では「食付き頻度」で、触れる直前で止まった回 (直前回避。下の「突進したのに、やめる」で説明します) も含みます。

擬餌の色食付き頻度 (直前回避を含む。4つの背景色の合計、回)
白138
透明130
緑108
赤77
青72

透明が2位です。総数は525回で、うち115回が直前回避でした。

背景色で分けると、もっとはっきりします。

背景の色食付き頻度が最も多かった擬餌その回数 (直前回避を含む)
白緑49
赤透明51
緑白 (有意差なし)32
青透明35

赤い背景と青い背景では、透明の擬餌の回数がいちばん多くなりました。ただし多重比較 (Tukey 法) で差が有意だったのは一部です。赤い背景では、透明と白の差は有意ではありません。青い背景で有意だったのは青との差だけで、透明と白・赤・緑の差は有意ではありません。直前回避を除いて完全な食付きだけを数えると、青い背景では白と赤 (各27回) が透明 (22回) より多くなります (論文の表3、表4)。

岡本らは、擬餌の選択には擬餌と背景のコントラストが強く影響したと解釈しています。ただし、論文のコントラストの表と合わない結果も2つあります (白い背景の青と、緑の背景の白。どちらもコントラストが最も大きいのに、多くは選ばれていません)。そのうえで、透明だけは説明できない、と書いています。透明な物体は、どの背景色に対しても見えにくいと考えられるからです。

そこで理由の候補を2つ挙げています。

1つめは、供試魚のコントラスト閾値が低い可能性です。論文は、ブルーギルのコントラスト閾値がヒトより遥かに低いことを示した Kawamura and Shimowada の研究を引いて、ヒトには見えにくい透明な擬餌を供試魚は十分に視認できたのではないか、としています。スズキの閾値を測ったわけではありません。

2つめが、山田が引いていた学習効果の話です。原文はこうです。スズキ稚魚の餌料生物となるアミ類、稚エビ、仔魚は色素が未沈着か非常に少ないため透明あるいは半透明であり、成長初期の摂餌によって透明の物体に興味を示すようになった学習効果の可能性である。

アミの記事にとって、これは重要です。3月に透明なルアーだけが食われたという山田の記録と、アミが透明であることと、この学習の仮説が、一本の線でつながります。

突進したのに、やめる

もう一つ、この論文の表から読み取れることがあります。

論文は食付き頻度を2つに分けています。突進して吻端で触れた場合が完全な食付き、突進したが吻端で触れる直前で止まるか方向転換した場合が直前回避です。

擬餌の色ごとに、直前回避の割合を計算しました。

擬餌の色直前回避 ÷ 食付き頻度 (直前回避を含む総数)
透明33%
白29%
緑19%
赤13%
青1%

透明と白は、突進しておきながら3回に1回はやめています。いっぽう青は、突進すればほぼ触れている。

これは私が表から計算したもので、論文が論じている内容ではありません。岡本らは背景色ごとの合計で分析していて、擬餌の色ごとの直前回避率には触れていません。回数が少ない色ほど割合が振れやすい点にも注意が要ります。

それでも、よく狙われる色と、触れるところまで行く色は別だという読み方はできます。ここは私の解釈です。

この実験が言っていないこと

岡本らは、スズキが普遍的に選択する色を見つけることはできなかったと結論しています。摂餌行動を誘発する背景色と擬餌色の普遍的な組み合わせは見出せなかった、と。

そのうえで、特定の水色における効果的な擬餌の色を見つけることは可能であろうと述べています。

背景の色で、効く色が変わる。ルアーカラーは効くのかで扱った話に、スズキを使った実験が加わったことになります。

釣り場で言われていることとの関係

アミパターンでは小型のシンキングペンシルやマイクロベイト用のルアーを、流れに乗せてゆっくり通す。釣り場で定着している言い方です。

私はこの言い方の出典を示せません。ただし上の記録は、小さいルアー・流す操作・強い動きに反応しないという3点で、この言い方と向きが一致しています。

一致しているからといって、正しいことにはなりません。記録は7回です。

分かっていないこと

1箇所、1回きりの調査です。宮城県の潟湖1つで、大潮と小潮を1回ずつ。茨城の河川で同じことが起きるかは分かりません。

5月の調査です。シーバスは何を食べているのかで見た東京湾奥のアミパターンは3月でした。時期が違います。季節による分布の変化については、著者ら自身が今後調べる必要があると書いています。

調査年の記載が、論文の中で食い違っています。本文の材料と方法には1993年5月とありますが、要約と図の説明には1994年5月とあります。どちらが正しいかを私は判断できません。この記事では年を特定せずに書きました。

採集効率を1と仮定した数字です。著者らは、アミがネットの間口から逃げること、その逃げ方に昼夜の差がある可能性、浅い場所では船の操作でアミの行動が変わる可能性を挙げて、定量的な採集ができる技術の確立が望まれると書いています。密度の絶対値はそのまま受け取れません。層どうしの比較や時間帯の比較として読むのが妥当だと思います。

シーバスがどの層でアミを食べているかは測っていません。この論文はアミだけを数えています。著者らも、魚類とアミ類の生活領域と活動時刻という接点を明らかにすることが今後の課題だと書いています。

照度の閾値は出ていません。何ルクスを下回ると上ずるのかは、この調査の測り方では出せません。

Sato and Jumars (2008) は、別の種の別の海の話です。Neomysis americana はアメリカ東海岸の種で、調査地はメイン州の河口です。結論の形が片山らと一致したことに意味はありますが、数字をそのまま日本の河口に持ってくることはできません。季節ごとのリズムの入れ替わりも、真夜中の沈降も、同じ形で起きるかは分かりません。

攻め方の根拠は7回の捕食記録です。東京湾奥の3月、3回の調査分。茨城で同じになる保証はありませんし、この回数では他のルアーが効かないことの証明にもなりません。試されなかった組み合わせも多く残っています。

アミがどの層にいるときの記録なのかは分かりません。片山らの調査では密度の中心は底層でした。山田の3月の記録は明暗部の境目で流し込む釣りなので表層寄りですが、そのとき底にどれだけいたかは誰も測っていません。

大洗周辺の河川に、どの種が何匹いるのかは分かりません。分布の報告は広島湾、涸沼、厚岸湾、筑後川河口、名取川河口などで、私の釣り場のものは見つけられませんでした。

続けて読むなら

3月のアミから、月を追って書いています。

記事つながり
バチはなぜ流れてくるのか次の月です。4月と5月はイソメ類。同じ流す釣りですが、餌のほうが自分で泳ぎ出します
カタクチイワシ3月に唯一捕食を得た Pintail tune6 が、9月と10月にも出てきます。透明が効いた話とも続きます
イカ稚イカがアミを食べます。そして昼は底、夜は表層という構造も同じです
ベイトはなぜそこにいるのか水がベイトを集める4つの仕組み。アミは、その4つめの実例そのものです

そして、10本すべてを1枚にまとめたベイトの見当をつけるがあります。時期・大きさ・層・攻め方の一覧です。

使ったもの・参考文献

  • 片山知史・玉城泉也・大方昭弘「河口汽水域におけるイサザアミ属 (Neomysis) 2種の鉛直分布の日周変化」(水産海洋研究 75(1), 19-28, 2011)— この記事の内容のほぼすべて。層別の密度、照度との負の相関、大潮と小潮でピーク時刻がずれたこと、2種の振る舞いの差
  • Sato, M. and Jumars, P. A.「Seasonal and vertical variations in emergence behaviors of Neomysis americana」(Limnology and Oceanography 53(4), 1665-1677, 2008)— 出現が集団の移動ではなく分布の縦方向の広がりであること、出現中も大半の個体が底の近くにいること、速い流れのときも出現するが高く上がらないこと、夏の日周リズムが秋に半日周期へ移ること、低い憩流で上がり上げ潮で上流へ運ばれること、真夜中の沈降が2つのリズムの重なりで説明できること
  • Suzuki, K. W., Nakayama, K. and Tanaka, M.「Horizontal distribution and population dynamics of the dominant mysid Hyperacanthomysis longirostris along a temperate macrotidal estuary」(Estuarine, Coastal and Shelf Science 83, 516-528, 2009)— クロイサザアミがニホンイサザアミより上流側に分布すること。同じく片山ら (2011) 経由です
  • 山田暁生「東京湾奥におけるスズキの摂餌対象の周年変化」(國學院高等学校「外苑春秋」第1号, 2011)— 3月の捕食記録7回、使われたルアーと操作、明暗部の境目という場所、透明なルアーへの反応。査読誌ではありませんが、方法と限界が具体的に書かれています
  • 岡本一・川村軍蔵・田中淑人「異なる背景色におけるスズキのルアー色の選択」(日本水産学会誌 67(3), 449-454, 2001)— スズキ10尾を使った水槽実験。背景色4種と擬餌色5種の組み合わせで525回の食付き (うち115回は触れる直前で止まった直前回避) を記録。透明の擬餌が白に次いで多かったこと、赤と青の背景では透明の回数が最も多かったこと (白などとの差は有意でない)、コントラストでは透明を説明できないこと、色素の少ない餌を食べてきた履歴による学習効果の可能性、普遍的に効く色は見つからなかったこと
  • ニホンイサザアミ (市場魚貝類図鑑)— 汽水域・淡水域に分布すること、古くから食用にされてきたこと