ベイトの見当をつける:時期・大きさ・層・攻め方の一覧

ベイトごとに10本書いたので、絞り込みに使える材料だけを抜き出して並べ直しました。月ごとの主役、体長、昼夜どの層にいるか、そして記録が残っている攻め方。あわせて、どこまで確かめられているかも1枚の表にしています。水面の跳ねから種を当てる方法は、どの資料にも書かれていませんでした。

この記事の見出し

ベイトごとに10本書きました。この記事は、その10本から絞り込みに使える材料だけを抜き出して並べ直したものです。新しく調べたものは入っていません。数字の出どころは、それぞれの記事にあります。

そのあとに、ボラが病気になったときの記事を1本足しました。ベイトの種類ではなくベイトの状態の話なので、下の表には入れていません。最後に案内があります。

釣り場に立ったとき、目の前に何がいるのかを決めたい。その手順を組み立てます。

先に:どこまで確かめられているか

ベイトによって、根拠の厚さがまるで違います。これを先に置きます。

ベイト吐瀉物で餌を確認したうえでのルアー記録分布や生態を数えた調査スズキが食べたという一次資料
アミあり (3月、7回)あり。層別に数えた調査なし
バチあり (4月と5月、31回)あり。群泳の調査あり。ただし目撃1件
ハゼとエビあり (6月と7月、31回)マハゼの暦のみなし
カタクチイワシあり (9月と10月、20回)東京湾の出現時期のみなし
ボラなし。11月と12月は推定図鑑と府県の資料なし
コノシロなし東京都と広島大学の資料なし
落ちアユなしあり。県のマニュアルあり。餌料生物の一覧
稚アユなし12年分の実測が公表されているあり。同上
サヨリなし国の資料が知見不足と明記あり。同上
イカなし釣魚図鑑のみ1行のみ。同じ資料の中で食い違う

上の4つと下の6つで、話の性格が変わります。上4つは吐瀉物で餌が独立に分かったうえでルアーの記録があり、下6つは生態から当てはめたものです。

時期で絞る

月ごとの主役です。吐瀉物で確認されたものは太字にしています。

月主なベイト補足
1月・2月記録なしイカは東京湾や三浦半島で11月から2月が最盛期とされています
3月アミ稚アユの遡上初確認も、茨城の2河川では3月8日と3月20日が平均
4月・5月イソメ類、いわゆるバチ有明海では種を替えながら10月下旬から5月上旬まで続きます
6月イソメ類とハゼ、エビが混在します移行期です。どちらかに決めつけると外します
7月ハゼ、エビマハゼの当歳魚が浅場に出てくる時期
8月記録なしスズキが沿岸から離れるため、調査されていません
9月・10月カタクチイワシハゼが吐瀉物から消えます。接岸は不定期
10月から12月落ちアユ那珂川で産卵と仔魚の降下が主に起きる時期。降下は例年9月中旬に始まります
11月ボラの稚魚 (推定)下旬にシラスが入ると、別のものを見る魚が混ざります
12月10センチを超える小魚 (推定)対象が大きくなっている、という推論です
周年コノシロ、サヨリコノシロは大規模な回遊をせず、もともとそこにいます

3月から10月までは、胃から出てきたもので確認されています。11月と12月は、どのルアーに食ったかからの推定です。

この暦は東京湾奥の運河の1年分です。茨城の記録が入っているのは、アユと涸沼だけです。

大きさで絞る

山田は、スズキが対象にしているのを体長1センチから20センチの範囲で、その時いちばん密度の濃い種と推定しています。20倍の幅があります。

ベイト体長測られ方
アミ1 cm前後論文中の記載
ハゼ、エビ4 cmから5 cm吐瀉物の実測
イソメ類、いわゆるバチ5 cmから20 cm論文中の記載
稚アユ約8 cm12年分の平均全長。ただし河口から8キロと30キロの地点
ジンドウイカ胴長12 cmまで図鑑の最大値
コノシロ1年で10 cm、2年で15 cm、3年で20 cm年齢別の記載
サヨリ月ごとに決まる。6月5、8月14、10月18、翌春25、翌秋30 cm南関東沿岸の成長
ボラの稚魚20 cm近く論文中の記載。ただし資料によって10 cmから20 cmの幅
落ちアユ不明秋に下る個体の実測を見つけられませんでした
カタクチイワシ不明接岸する群れのサイズを測った数字がありません

サヨリだけは、月から体長が決まります。同じ種でも秋は18センチ、春は25センチ。時期を決めれば、大きさも決まる唯一のベイトです。

層で絞る

昼と夜で変わるものがあります。

ベイト昼夜
アミ底底が中心のまま、表中層まで広がる
ジンドウイカ水深50 m以浅の中層と底層表層にも浮上する
バチ、つまり多毛類底に住んでいる大潮の満潮直後に泳ぎ出て、引き潮で流下する
ハゼ底と際同じ
カタクチイワシ表層を群泳同じ
サヨリ表層。流れ藻に付随同じ
コノシロ水深15 m以浅の沿岸と河口の汽水域同じ
イナッコ (ボラ)底をなめる。ただし表層にも出ます跳ねは夕方に増えます

アミとイカは、同じ構造をしています。昼は底、夜は上。ただしアミについては、夜も密度の中心は底のままだと測られています。表層で見えているのは全体のごく一部です。

イナッコは注意が要ります。底のものを食べますが、常に底にいるわけではありません。秋は河口へ降りる移動期にあたります。

もう1つ、病気で弱った個体は表層に浮きます。底にいるはずの魚が、群れから離れて単独で表層を漂う。カビボラは白点病なのかで扱いました。

川なら、上下でも絞れます

位置いるもの
感潮域の上流部イトメ、カワゴカイ属。淡水域との境界付近まで
感潮域の中流から下流アリアケカワゴカイ、コケゴカイ、スナイソゴカイ
汽水域より上落ちアユ。産卵場は海水の影響が無い区間にあります
河川内 (春から夏)ボラの当歳魚。秋に河口へ降ります
海から川へ (1月から4月)稚アユ。河口から順に上っていきます

落ちアユだけは、汽水域まで降りてきません。産卵場で止まります。

絞り込みの手順

ここまでを順番にすると、こうなります。

  1. 月で候補を減らす
  2. 場所と層で減らす。川なら上下、海なら底か表層か
  3. 見えた大きさで減らす
  4. 残った候補に、下の水面の記述を当てる

それでも一意には決まりません。理由は次の2つです。

水面のサインは、逆向きに使えません

これがこの記事でいちばん正直に書きたいところです。

水面の動きから種を当てる方法を書いた資料は、10本を書くあいだ、1つも見つかりませんでした。

種ごとの記述なら、3つあります。

ベイト水面での記述出典
ボラ盛んに水面にジャンプする。特に夕方はその数が増す東京都島しょ農林水産総合センター
サヨリ追われると半月状の弧を描いて跳躍し、体長の5倍以上飛ぶ水産庁の資料
バチ水面近くをゆっくり、なめらかな鞭のような動きで泳ぐHanafiah ら (2006)

どれも「その種はこう動く」という記述です。「この動きならこの種」ではありません。逆向きには使えません。

たとえば水面で何かが跳んだとき、ボラの可能性もサヨリの可能性もあります。サヨリの跳躍は体長の5倍以上なので、18センチなら90センチ以上を空中で移動します。それを見分ける基準は、どちらの資料にも書かれていません。

混ざる月が、記録に残っています

絞り込んでも1つに決まらない月があります。しかも推測ではなく、記録に残っています。

6月。同じ月の中で、イソメ類を食べていた個体と、4センチから5センチのハゼとエビを食べていた個体が両方いました。動きの小さいルアーを低速で引いて静かに食った個体の吐瀉物はイソメ類で、ジャーキングで食った個体はハゼとエビでした。

11月。20センチ近いボラの稚魚を狙う個体がいる一方で、下旬にシラスの大群が入ると、どのルアーでも食わせにくくなりました。ルアーの大きさが意識している対象と大きく違うためです。

同じ日、同じ場所に、別のものを見ている魚がいます。

攻め方:記録があるもの

吐瀉物で餌が独立に分かったうえで、どのルアーのどの操作で食ったかが記録されている月です。すべて山田 (2011) の東京湾奥のデータで、1年分、1海域です。

月ベイト効いたルアー効いた操作捕食の回数
3月アミ25種類のうち最も小さい1種類だけ流れに乗せて流し込み、そこから引く7
4月バチ細身のシンキングペンシル 88.9%ドリフト 94.4%18
5月バチ同 100%同 100%13
6月移行期シンペン3、シンキングミノー2、バイブ2ノーマルリトリーブ3、ジャーキング47
7月ハゼ、エビバイブレーション 87.5%ジャーキング 87.5%24
9月イワシ10 cm未満のシンキングミノー 100%ジャーキング 100%5
10月イワシ同 86.7%ジャーキングとリトリーブの複合が60.0%15

7月のバイブレーションの21回とジャーキングの21回 (どちらも24回の87.5%) は、同じ21回の可能性が高いです。同じ24回を2通りに数え直したものなので、ルアーが効いたのか操作が効いたのかは分けられません。

回数がどれも少ないことに注意してください。3月は7回、9月は5回です。

攻め方:慣習の整理しかないもの

吐瀉物で裏を取ったルアーの記録が存在しないベイトです。釣り人のあいだで共有されている整理を並べます。調査の結果ではありません。

ベイトルアーの種類大きさ時間帯とレンジ動かし方
コノシロフローティングミノー、シンキングミノー、バイブレーション12から17 cm表層から底層昼はミディアムリトリーブやジャーク、夜はスロー
落ちアユトップウォーター、フローティングミノー、シンキングミノー12から17 cm夜。表層から中層デッドスローからスロー、ドリフト
稚アユフローティングミノー、シンキングミノー、シンキングペンシル、バイブレーション7から9 cm昼と夜。表層から中層昼はミディアムやトゥイッチ、夜はスローやドリフト
サヨリフローティングミノー、シンキングミノー、シンキングペンシル12から17 cm昼と夜。表層昼はミディアムやトゥイッチ、夜はスローやドリフト
イカフローティングミノー、シンキングミノー、シンキングペンシル5から12 cm夜。常夜灯周り。表層から中層デッドスローからスロー、ストップアンドゴー、リフトアンドフォール
ボラ (11月と12月)10 cm未満のシンキングミノー、12月は10 cm超のフローティングミノー——ジャーキングとリトリーブの複合

ボラの行だけ性格が違います。慣習ではなく山田の記録ですが、餌の判断そのものが推定なので、こちらに置きました。

大きさについては、独立した根拠があるものもあります。コノシロの12センチから17センチは、3年で20センチという成長と、1尾118グラムを飲んでいた捕食例に照らして矛盾しません。稚アユの7センチから9センチも、実測の約8センチと合います。

いっぽう、稚アユのベイトの大きさを「5センチ前後」とする記述は、実測とずれています。イカの「スルメイカなど」という種名も、港湾部で数センチという条件と噛み合いません。

食い方が変わります

餌によって、同じ魚が食い方を変えます。

意識している餌捕食のしかた
イソメ類ルアーを咥えてゆっくり沈下する。定位したまま吸い込み、定位置に戻る
小魚やエビ非常に激しい。突然ひったくるように攻撃してくる

そして水産庁の資料に、もう1段あります。食いついた餌を一旦離し、餌の死亡を確認してから一飲みに摂食する。

咥えた瞬間と飲み込む瞬間のあいだに、間があることになります。バチのときに乗らないのと、夏にひったくられるのは、別の行動を見ていることになります。

確実なのは、吐瀉物です

ここまで絞り込みの話をしてきましたが、確実な方法が1つあります。

釣った魚が吐いたものを見ることです。その日その場所で何を食べていたかが、直接分かります。

そしてルアーの選択とは独立した情報です。「このルアーに食ったから、この餌を意識していたのだろう」という推論には、もともとその判断がルアーから出ているという循環があります。吐瀉物には、それがありません。

この10本のうち、根拠が厚い4本は、すべて吐瀉物で餌が確認された月のものです。

茨城で、どこまで使えるか

正直に書きます。

データの出どころ場所
月ごとのベイトと攻め方 (山田 2011)東京湾奥の運河と湾奥
1017尾の胃内容物 (宮原ら 1995)播磨灘、瀬戸内海
アミの層別分布 (片山ら 2011)名取川河口の潟湖、宮城
バチの群泳 (Hanafiah ら 2006)大牟田川河口、有明海
マハゼの暦東京湾
コノシロ、ボラ、サヨリ、イカの生態東京湾、瀬戸内海、南関東など
アユの遡上と産卵那珂川、久慈川。茨城の実測
スズキ0年魚の涸沼への出入り涸沼。4月上旬に入り始め、11月中旬に川の下流部へ、12月中旬までに海へ (涸沼のスズキは4か月かけて抜ける)

茨城の実測はアユと涸沼だけです。他はすべて別の海域の話で、そのまま持ってこられません。ベイトの顔ぶれ自体が違う可能性があります。

この記事で分かっていないこと

水面のサインから種を当てる方法がありません。上に書いたとおりです。

8月と、1月から2月の記録がありません。山田は8月を調査していません。

茨城の暦がありません。アユ以外は、別の海域のデータを当てはめています。

慣習の整理には出典がありません。ルアーの種類や動かし方は、釣り人のあいだで共有されているものです。元になったデータを、私は確認していません。

吐瀉物で確認された月でも、回数は多くありません。いちばん多い7月で24回、少ない9月は5回です。

各記事へ

ベイト記事この記事に載せていないこと
アミアミはどこにいるのか夜に上がるのではなく散らばる、という測定結果
バチバチはなぜ流れてくるのか種ごとの群泳時期。満潮から3時間後までに流下すること
ハゼとエビハゼとエビはなぜ6月から入れ替わるのか6月に立つ場所そのものが変わること
カタクチイワシカタクチイワシ8尾以上の群れで捕食成功率が1〜2割に落ちること
ボラボラは底をなめるハクとイナッコで食べるものが変わる境目
コノシロコノシロ播磨灘で1位なのに東京湾奥の記録にゼロという食い違い
落ちアユ落ちアユ産卵場の条件が数字で決まっていること
稚アユ稚アユ遡上の日と大きさの12年分。予測の精度
サヨリサヨリ一生を表層で過ごすこと。跳躍の距離
イカイカ種名が条件と噛み合わないこと

土台になる2本もあります。

シーバスは何を食べているのかには、月ごとの表の元データと、大きさから年齢が読める表があります。

ベイトはなぜそこにいるのかには、水がベイトを集める4つの仕組みがあります。ベイトによって、当てはまったり当てはまらなかったりします。

ベイトの種類ではない、もう1本

カビボラは白点病なのか

上の10本は、ベイトの種類ごとの記事です。この1本だけ性格が違います。同じボラが、病気になったときの話です。

秋の涸沼で、体表に白いものが付いたボラが大量に現れ、それをシーバスが襲う。カビボラと呼ばれています。釣り人の説明では「急な水温変化で白点病に感染した」とされていますが、白点病は点が散る病気で、カビが生えたようには見えません。症状に合うのは水カビ病のほうでした。

上の「層で絞る」に効くのは、1点だけです。弱った個体は群れから離れ、表層に浮きます。底をなめる魚が、単独で表層にいる状態になります。

ただし、現物を顕微鏡で確かめた報告は見つかりませんでした。何の病気かは決着していません。