大きいルアーは大きい魚を釣るのか
ランカー狙いには大きいルアー。よく聞く話です。同じシリーズのルアーを4サイズ使って条件をそろえた実験がありました。平均サイズは確かに上がりましたが、大型の釣獲率は上がっていませんでした。
ランカーを狙うなら大きいルアーを投げろ。よく聞く話です。
確かめられているのかを調べました。結論から書くと、条件をそろえた実験があり、通説は半分だけ当たっていました。
調べて書いた記事です。実験はしていません。読んだ論文は末尾に挙げます。
同じシリーズを4サイズ使って比べた実験があります
Wilde, Pope, Durham が2003年に報告した実験は、ルアーの大きさだけを変えて、釣れる魚の大きさが変わるかを調べています。
設計が丁寧なので、詳しく紹介します。
- 同じシリーズ、同じ色のフローティングミノーを4サイズ。70・89・133・178 mm
- テキサス州の4ヘクタールの池。釣り人が少なく、持ち帰りもほとんどない場所
- 釣り人4名が、4サイズを同時に投げます
- 30分ごとに、ラテン方格法にしたがってルアーを交換します。誰がどのルアーを使うかを機械的に入れ替え、腕の差が結果に混ざらないようにしています
- 1サイズにつき50尾釣れたら、そのルアーを「いちばん釣れていないサイズ」と交換します
釣り人の腕、時間帯、場所が結果に混ざらない設計です。
対象はオオクチバス。この池はわざと選ばれています。203〜254 mm の個体が個体群の75%を占めるという、小型に偏った池です。論文はこれを「仮説にとって厳しい条件」と書いています。
平均サイズは、確かに上がりました
179尾が釣れました。152〜457 mm です。
| ルアーの長さ | 釣れたバスの平均全長 |
|---|---|
| 70 mm | 233 mm |
| 89 mm | 243 mm |
| 133 mm | 240 mm |
| 178 mm | 267 mm |
統計的に有意な関係がありました。ルアーが長いほど、釣れる魚は大きい。
通説は、ここまでは当たっています。
ただし、効き方はごくわずかです
同じ結果を別の見方で書きます。
論文が出した回帰式はこうです。
魚の全長 (mm)= 218.0 + 0.23 × ルアーの長さ (mm)
ルアーを1 mm 長くすると、魚は0.23 mm 大きくなる。
言い換えると、ルアーを10センチ長くして、魚は2.3センチ大きくなる計算です。
実測でも同じことが出ています。ルアーの長さを2.5倍にして、釣れた魚の平均は14.6%しか増えていません。
そして決定係数は 0.07 でした。釣れる魚の大きさのばらつきのうち、ルアーサイズで説明できるのは7%です。残りの93%は別の要因です。
大型の釣獲率は、上がっていませんでした
ここがこの記事の山場です。
論文は、釣獲率をサイズ別に分けて出しています。単位は1時間あたりの尾数です。
| ルアーの長さ | 全サイズ | 254 mm 超 | 305 mm 超 |
|---|---|---|---|
| 70 mm | 13.00 | 4.25 | 0.00 |
| 89 mm | 10.40 | 2.80 | 0.40 |
| 133 mm | 13.00 | 2.75 | 0.50 |
| 178 mm | 3.29 | 1.43 | 0.43 |
305 mm 超の列を見てください。
いちばん大型を釣ったのは、いちばん大きいルアーではありません。133 mm の中間サイズです。そして178 mm は、それより低い。
89 mm 以上では、大型の釣獲率がルアーサイズと関係していません。論文の言葉では、有意差があったのは70 mm と178 mm の間だけでした。
大型の釣獲率は、どのルアーでも1時間に0.4〜0.5尾です。2時間から2時間半に1尾という水準で、ルアーを大きくしても増えていません。
では、何が起きているのか
小さい魚が釣れなくなっているだけです。
全サイズの釣獲率を見ると、178 mm は1時間3.29尾。70 mm の約4分の1です。
減っているのは小型の側です。論文はこう書いています。ルアー間の釣獲率の差は、305 mm 以下の魚を捕らえる効率の違いによるものである。
つまり、こういうことになります。
| よく言われること | 実験が示したこと |
|---|---|
| 大きいルアーは大きい魚を釣る | 大きい魚の釣獲率は変わらない |
| — | 小さい魚を釣らなくなる |
| — | その結果、平均サイズが上がる |
平均が上がったのは、大きい魚が増えたからではありません。小さい魚が減ったからです。
釣った魚のサイズを平均すれば、確かに上がります。でも、ランカーに出会う頻度は変わっていません。
なぜそうなるのか
口の大きさで説明がつきます。
魚が成長すると、食べられる餌の上限が上がります。ただし、下限は上がりません。大きい魚も、小さい餌を食べ続けます。
これは論文が引用している一般的な整理です。魚が成長すると、より大きな獲物が食性に加わるが、小さい獲物が除外されるわけではない。
どの大きさの魚が食いつくか
大きいルアーを1本決めて、それにどの魚が食いつくかを考えます。
横軸に魚の全長、縦軸にそのルアーへ食いつく確率を取ると、こうなります。
| 魚の全長 | そのルアーに食いつく確率 |
|---|---|
| 小さい | ほぼ0。口に入らない |
| 中くらい | 急に立ち上がる |
| 大きい | 高いまま、それ以上は上がらない |
低いところから立ち上がって、上で平らになります。この形をS字と呼びます。要点は、上に切れ目がないことです。口に入る大きさになった魚は、そこから先はみんな食える側にいます。
ルアーを大きくすると、立ち上がりの位置が右へ動きます。これまで食えていた小型が、食えなくなる。
ところが、大きい魚の側は元から平らなので動きません。すでに全員が食える状態なので、それ以上は上がりようがないからです。
大型の釣獲率が変わらなかったのは、これで説明がつきます。ルアーを大きくして動くのは、下の切れ目だけです。
ただし、すべての魚がこの形ではありません
論文は、口の小さい魚(ブルーギルやローチ)では山型になるとしています。
| 魚の全長 | そのルアーに食いつく確率 |
|---|---|
| 小さい | 低い |
| ちょうどよい | 最大 |
| 大きい | また下がる |
餌に最適な大きさがあって、大きすぎても小さすぎても襲われにくくなるという形です。
この形だと、大きいルアーは小型を切ると同時に、大型も切ってしまいます。上にも切れ目があるからです。
S字か山型かで、大きいルアーの意味がまったく変わります。
そしてシーバスがどちらなのかは、分かりません。口が大きいのでS字寄りだと想像はしますが、確かめた資料は見つけられませんでした。
動きとサイズの関係は、もっと見つかりません
企画の後半、動きと魚のサイズの相関についてです。
こちらは、直接調べた研究がさらに少ないです。見つかったものを並べます。
| 研究 | 結果 |
|---|---|
| Arlinghaus ら 2017 (パイク) | ソフトプラスチックとスプーンで、釣れた魚の大きさに差はなかった |
| Wilde ら 2003 (オオクチバス) | カラーは釣れた魚の大きさに影響しなかった |
| Moraga ら 2015 (オオクチバス) | 明るい色は、暗い色や自然な色より大きい魚を釣る傾向があった |
下2つが食い違っています。
どちらもオオクチバスで、どちらもカラーを比べています。Wilde らはクランクベイトの色を5パターン、Moraga らはワームの色を6色。ルアーの種類も、比べた色の組み合わせも違います。どちらが正しいとは言えません。
動きそのものについては、Arlinghaus らの1本だけです。そして差はありませんでした。ソフトプラスチックのシャッドとスプーンという、動きも材質も大きく違う2つを比べて、釣れた魚の大きさは変わらなかった。
ウォブリングとローリングの比較は、ウォブリングとローリングの記事に書いたとおり、そもそも区別して観測できていません。
大きい魚は、もともと釣られやすい
通説が生まれる仕組みとして、もう1つ重要な事実があります。
坪井潤一氏らが2002年に報告したイワナの調査は、天然の4河川で大型個体と成長率の高い個体のほうが釣られやすかったと報告しています。
理由として挙げられているのは3つです。針の大きさによる物理的要因、大型個体は流れのよい位置に定位し餌をめぐる争いに強いこと、そして摂餌頻度が高いこと。
Arlinghaus らのパイクの実験でも、日を追うごとに釣れる魚が小さくなりました。大きい個体が先に釣られています。
大きい魚は、ルアーサイズと無関係に、釣られやすい側にいます。
通説が生まれる仕組み
以上を組み合わせると、こういう説明ができます。ここからは私の推測です。
1つめ。平均が上がるのは事実です。大きいルアーを投げた日の釣果は、確かに平均サイズが大きい。それを「大きい魚が釣れた」と受け取るのは自然です。
2つめ。小さい魚が減ると、記憶に残るのは大きい魚だけになります。1時間に13尾釣れて大半が小型の日と、1時間に3尾でうち1尾が大型の日。後者のほうが「大きいルアーは効いた」という記憶を作ります。
3つめ。大きいルアーを投げるのは、ランカーを狙っているときです。場所も時間も条件も、そのときは違うはずです。ルアーサイズだけを取り出して評価できていません。
4つめ。分母を数えていません。「良く釣れるルアー」の正体に書いた問題がそのまま当てはまります。1時間0.4尾と0.5尾の差を釣行で見分けることはできません。
それで、どうするか
「大きいルアーはランカー率を上げる」は、実験では支持されませんでした。
ただし、「大きいルアーは小型を減らす」は支持されました。これは実釣で意味があります。
小型のバイトに手を焼いている場面では、ルアーを大きくするのは有効です。数は減りますが、減るのは小型の側です。
逆に、大型に出会う回数を増やしたいなら、ルアーサイズは効きません。Arlinghaus らの結論と同じで、投じた時間と場所選びのほうが大きいはずです。
そして、大きいルアーには代償があります。実験では、全体の釣獲率が4分の1になりました。バイトが4分の1になれば、そこから学べることも4分の1になります。
分かっていないこと
シーバスの研究は1本もありません。紹介したのはオオクチバス、パイク、イワナです。口の大きさに対する餌の選び方が、シーバスでどういう形になるかも分かりません。
Wilde らの実験は、1つの池で2日間のものです。そして203〜254 mm の個体が75%を占める、小型に偏った池でした。論文自身が、もっとバランスの取れた個体群ならルアーサイズによる平均の差はもっと大きくなるはずだと書いています。実際、シミュレーションでは87〜111 mm の差になっています。
大型の釣獲率が上がらなかったという結果は、この池に大型が少なかったせいかもしれません。305 mm 超は1時間に0.5尾以下しか釣れていないので、そもそも差を検出できるだけの数がありません。
70 mm のルアーが279 mm より大きい魚を1尾も釣らなかった点について、論文自身が「サンプリング変動かもしれない」と書いています。
133 mm のルアーでは、スレ掛かりが多かったと報告されています。論文は、このルアーの平均全長が89 mm より小さかったことをそれで説明しています。サイズによってフックの数と大きさも違っていました。
シーバスがS字の側だろうというのは、私の推測です。確かめた資料はありません。
そして、動きと魚のサイズの関係を直接調べた研究は、1本しか見つかりませんでした。その1本では差がありませんでした。
続けて読むなら
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- 飛距離は本当に有利なのか— 投じた時間と場所選びが最も効く、というこの記事の結論の先
使ったもの・参考文献
- Wilde, Pope, Durham「Lure-size Restrictions in Recreational Fisheries」Fisheries 28(6), 18-26, 2003— 4サイズのルアーを同時に使い、ラテン方格法で交換した実験。平均は上がるが大型の釣獲率は上がらないこと。カラーは体長に影響しないこと
- Arlinghaus, Alós, Pieterek, Klefoth「Determinants of angling catch of northern pike」Fisheries Research 186, 648-657, 2017— ルアーの種類と釣れた魚の大きさは無関係だったこと。大きい個体が先に釣られること
- 坪井潤一, 森田健太郎, 松石隆「キャッチアンドリリースされたイワナの成長・生残・釣られやすさ」日本水産学会誌 68(2), 180-185, 2002— 大型個体と成長率の高い個体のほうが釣られやすいこと
- Moraga, Wilson, Cooke「Does lure colour influence catch per unit effort, fish capture size and hooking injury in angled largemouth bass?」Fisheries Research 172, 1-6, 2015— 明るい色が大きい魚を釣る傾向があったこと
- 「良く釣れるルアー」の正体— 釣行では確かめられない差の大きさ
- ウォブリングとローリングは、別の動きではありませんでした— 動きを区別して観測できていないこと
- ルアーカラーは効くのか— カラーと釣果を比べた研究