結局どのカラーを選べばいいのか:計算で出した答え

カラーの効果は釣果では確かめられません。では何も言えないのか。計算できる性質だけで総当たりしました。途中で見落としが見つかり、答えが変わりました。行き着いた1色を書きます。

ここまでカラーについて6本書いてきました。そのどれも、「この色が釣れる」とは書いていません。 確かめる手段がないからです。

では何も選べないのか。 そうではありませんでした。

釣果では確かめられなくても、計算できることがあります。 その範囲で総当たりしました。

そして途中で見落としが見つかり、答えが変わりました。 その過程も含めて書きます。

調べて書いた記事です。 釣り比べたわけではありません。水中カラーシミュレーターの計算部分を使い、180通りの条件でコントラストを出したものです。計算は自分で回しています。

何を基準にするか

先に、使わない基準をはっきりさせます。

釣果は使いません。 「良く釣れるルアー」の正体で計算したとおり、バイト率1.0%と1.5%を区別するだけで約15,500投が必要でした。カラーの差はもっと小さいので、届きません。

「替えたら釣れた」も使いません。 ルアーカラーは効くのかで計算したとおり、色を替えても何も変わらないという前提でも、その流れは7回に1回起きます。

使うのは、コントラストです。 ルアーと背景の明るさの差。これは計算できます。

理由は自然界にない色に、なぜ魚は食ってくるのかにあります。捕食は検出識別の2段階で、色が効くのは1段目です。そして検出は、背景との差で決まります。

コントラストとは何か

背景に対して、どれだけ明るさが違うかの割合です。式にするとこうなります。

コントラスト = |ルアーの明るさ − 背景の明るさ| ÷ 背景の明るさ

割り算しているのがポイントです。 引き算だけだと、全体が暗い場面と明るい場面を比べられません。背景で割ることで、どちらの場面でも同じ物差しになります。

具体例です。背景の明るさを100とします。

ルアーの明るさコントラスト見え方
10000.00背景と同じ。輪郭が消える
90100.10かすかに暗い
50500.50はっきり暗い
150500.50はっきり明るい
01001.00真っ黒に見える

絶対値を取っているので、明るくても暗くても同じ扱いです。 背景より明るいか暗いかは問わず、離れていれば離れているほど見つけやすいとみなします。

この式は、スズキを使った実験でも同じ形で使われています。 岡本一・川村軍蔵・田中淑人 (2001)は、擬餌の輝度と背景の輝度を実測し、同じ定義でコントラストを求めています。この論文は下の「クリアカラーをどう見るか」でも扱います。

「明るさ」はどう出すか

ルアーと背景それぞれについて、水中カラーシミュレーターで目に届く光を計算し、そこから明るさを出します。

明るさ = 0.2126 × 赤 + 0.7152 × 緑 + 0.0722 × 青

緑に7割の重みがかかっています。 これは人間の目が緑にいちばん敏感だからです。魚が同じ重みを持っているかは分かりません。 この点は後で改めて書きます。

背景は、魚がどの向きから見ているかで変わります。 見上げれば水面からの光、横なら水そのもの、見下ろせば暗い深み。同じルアーでも、背景が変われば数字が変わります。

まず、単純なモデルで総当たりしました

ここから2段階で進めます。 まず単純なモデルで計算し、そのあと見落としを1つ直します。先に結論を言うと、直したら答えが変わりました。

シミュレーターの計算部分を使い、次の条件をすべて掛け合わせました。

変えたもの中身
水の種類濁った外洋 / 澄んだ沿岸 / 沿岸 / 濁った沿岸4
魚が見る向き見上げる / 横から / 見下ろす3
光源昼光 / ナトリウム灯 / 白色LED昼白色3
水深と距離0.5+0.5 / 1+1 / 2+2 / 2+3 / 3+5 m5

4 × 3 × 3 × 5 = 180通りです。この段階では6色(レッドヘッド、チャート、イワシ、パール、ブラック、ピンク)について計算し、各条件で1位になった回数を数えました。あとでボラを足して7色にします。

結果

ルアーの色180通り中、コントラストが1位になった回数
ブラック120
パール60
ほか4色0

2色で全部を分け合いました。 レッドヘッドもチャートもイワシもピンクも、1回も1位になりません。

分かれ目は、見る向きだけでした

内訳を見ると、きれいに分かれています。

魚が見る向きコントラストが1位になる色60通り中の回数
見上げるブラック60/60
横から見るブラック60/60
見下ろすパール60/60

水の濁りも、光源も、距離も、順位を変えませんでした。

念のため確かめます。沿岸の水、見上げる向きで、条件だけ変えた場合の順位です。

変えた条件順位
昼光ブラック > レッドヘッド > イワシ > ピンク > チャート > パール
ナトリウム灯ブラック > イワシ > レッドヘッド > ピンク > チャート > パール
白色LEDブラック > レッドヘッド > イワシ > ピンク > チャート > パール
経路1mブラック > レッドヘッド > イワシ > ピンク > チャート > パール
経路8mブラック > レッドヘッド > イワシ > ピンク > チャート > パール

1位は動きません。 2位と3位が入れ替わる程度です。

なぜこうなるのか

背景の明るさで決まっているからです。

沿岸の水、水深1m・距離1mでの数値です。

ルアーの色コントラスト(沿岸・水深1m・距離1m・昼光)、見上げる同、横から同、見下ろす
ブラック0.500.460.01
レッドヘッド0.420.370.18
イワシ0.370.310.29
ピンク0.350.290.33
チャート0.170.100.69
パール0.080.000.88

見上げる向きと横から見る向きでは、背景が明るいからです。水面からの光と、水そのものの散乱光。そこに対して最も暗いブラックが、いちばん目立ちます。

見下ろす向きだけ、背景が暗くなります。 光を返すものがないからです。そこでは最も明るいパールが目立ちます。

パールは横から見る向きで0.00です。水中で色が消える仕組みで書いたとおり、白いルアーの明るさと水そのものの明るさが一致して、輪郭が消えます。

第一段階の結論

この計算からは、こうなります。

考え方選ぶ色
いちばん多くの場面でコントラストが最も高くなる色ブラック
2つ持てるブラックとパール

すべての2色の組を試したところ、ブラックとパールの組だけが、180通りすべてでどちらかが1位でした。 苦手な向きが正反対だからです。

ただし、この結論には見落としがありました。 次でそれを直します。

フラッシングの計算の中身

狂鱗のようなホログラムや、フラッシュブーストのような反射機構は、何を足しているのか。

水中で色が消える仕組みで書いたとおり、反射面は届いた光をそのまま返します。

計算では、反射率1の白い面を置いたときの明るさを足しています。 実際に確かめると、鏡面反射として足している量は「白い面の明るさ − 水そのものの明るさ」とぴったり一致しました。

つまり「白を足している」のと同じです。 塗装を通さないので波長を選びません。だから光る瞬間は、必ず明るくなる方向に動きます。

背景が暗い向きでは有利に、明るい向きでは不利に働きます。 ただしどちらの効き方も、次の節の補正で大きく変わります。

夜は「見下ろす」ではありません

ここで、間違えやすい点を書いておきます。夜だから背景が暗い、とはなりません。

向きと明るさは、別のものです。 向きは魚とルアーの位置関係、明るさは光源の話です。

計算で確かめました。沿岸の水、見上げる向きの背景を1としたときの比です。

光源背景の明るさ(沿岸・水深1m・距離1m)、見上げるを1.00とした比同、横から同、見下ろす
昼光1.000.920.49
ナトリウム灯1.000.920.49
白色LED1.000.920.49

光源を変えても、3方向の比はまったく同じです。

理由は単純で、夜でも光は上から来るからです。月でも常夜灯でも、光源は水面の上にあります。だから夜も、見上げれば背景は明るく、見下ろせば暗い。 全体が暗くなるだけで、上下の関係は変わりません。

むしろ夜のほうが、この差は効くかもしれません。 光源が常夜灯1つなら、上とそれ以外の差は昼より大きくなるはずです。これは推測です。

だから、夜のフラッシングについてもこうなります。 魚が見上げているなら、背景は夜でも明るい側です。「夜は暗いから光ったほうが目立つ」とは、この計算からは言えません。 どれだけ光るかは次の節でさらに変わります。

計算をやり直しました:腹は影になります

ここまでの計算には、大きな見落としがありました。

光は上から来ます。だから腹は影になります。 そして魚が見上げているとき、見えているのは腹です。

上の計算は、ルアーの全体が同じ光を受けている前提でした。実際には違います。

向きによって、見える面が変わります

魚が見る向き主に見える面その面が受ける光
見上げる下から来る弱い光だけ
横から見る背中と腹の両方中間
見下ろす背中上から来る強い光

この効果を計算に入れました。 下から来る光が上から来る光の何割かを R と置き、腹の明るさをR倍します。

あわせて、ここからボラを足して7色にします。 背中と腹を分けて扱えるようになったので、イワシとの違いを比べられるようになったためです。

Rの値は分かりません。 正確に出すには後方散乱の係数という別のデータが必要で、いま使っている表には入っていません。そこでRを0.05から0.35まで振って、結論が変わるかを確かめました。

結果が変わりました

沿岸の水、水深1m・距離1m、昼光。Rを0.10としたときの数値です。

ルアーコントラスト(沿岸・水深1m・距離1m・昼光・R=0.10)、見上げる(見えるのは腹)同、横から同、見下ろす(見えるのは背中)
ブラック0.510.460.01
ピンク0.490.370.33
チャート0.470.270.69
ボラ0.470.320.16
イワシ0.470.300.29
パール0.470.210.88

見上げる向きで、色の差がほとんど消えました。 0.46から0.51の範囲に7色すべてが収まっています。

理由は単純です。腹が影になっているので、白く塗っても暗く見えるからです。 背景が明るく、ルアーはどれも暗い。全部シルエットになります。

これは、腹の塗り分けを計算に入れる前とは逆の結果です。 前は見上げる向きでブラックが0.50、パールが0.08と大きく開いていました。影を入れると、その差が消えます。

フラッシングも、見上げると効きません

同じ理屈が反射にも効きます。腹の反射面が返せるのは、下から来た弱い光だけです。

見る向き光る量(見下ろす場合を100として)
見上げる10
横から55
見下ろす100

見上げられているとき、フラッシングは10分の1しか光りません。 ご指摘のとおりでした。

前に「見上げる向きでは光るとコントラストが下がる」と書きましたが、それも修正が要ります。 下がるのではなく、そもそもほとんど光りません。 影響が小さいというのが正しい書き方です。

総合すると:1色ならチャート

条件の重み付けで答えが変わるので、2つに分けます。

表の数字の読み方

このあとの表には、2つの数字が出てきます。どちらもコントラストの話です。

まず、その条件でいちばんコントラストが高かった色を100%として、各色が何%だったかを出します。

例です。沿岸の水、水深1m・距離1m、昼光、見下ろされている場合の実際の値です。

コントラスト(沿岸・水深1m・距離1m・昼光・見下ろす)いちばん高い色を100%とした割合
パール0.88100%
チャート0.6979%
ピンク0.3337%
イワシ0.2933%
レッドヘッド0.1821%
ボラ0.1618%
ブラック0.011%

この割合を、180通りすべての条件で出します。 ある色について、180個の割合が並びます。そこから2つの数字を作ります。

1つめ。180個のうち、いちばん小さかった数字。 表では「いちばん悪い条件でのコントラスト」と書いています。

チャートの52%は、いちばん条件が悪いときでも、その場で最良の色の52%のコントラストは出せるという意味です。

ブラックの1%は、いちばん条件が悪いときには、その場で最良の色の1%しかコントラストが出ないことを指します。上の表の見下ろされている場合が、まさにその状況です。

この数字は、想定が外れたときの被害の大きさを表します。 想定が外れるというのは、魚が思っていたのと違う向きから見ていたということです。数字が大きい色ほど、外れても被害が小さくなります。

2つめ。180個の平均。 よくある場面で強いかどうかを表します。

3つの向きを等しく扱うなら

チャートです。 Rを0.05から0.35まで振っても、すべてでチャートが1位でした。

ルアーいちばん悪い条件でのコントラスト(その場で最良の色を100%とした割合)180通りの平均
チャート52%76%
チャートの背中に白い腹44%73%
パール37%78%
ピンク37%72%
イワシ24%62%

チャートが強い理由は、両側で中途半端に良いからです。 見上げれば他と同じくシルエットになり、見下ろせば明るいので目立つ。どちらでも致命的に外しません。

イワシやボラは、ここでは下位です。 前の計算で無難だったのは、腹の影を入れていなかったからでした。

表層しか引かないなら

ブラックです。 見上げると横からの2方向だけで見ると、ブラックが全条件で1位でした。

ルアーいちばん悪い条件でのコントラスト(その場で最良の色を100%とした割合)120通りの平均
ブラック100%100%
黒い背中に白い腹68%81%
ボラ64%80%
イワシ60%78%

見下ろされる状況を捨てるなら、ブラックが最良です。 表層から中層をルアーが通り、魚が下から見上げているなら、この前提が当てはまります。

どちらを取るか

汎用性の高いカラーを1色だけ選ぶとしたらチャートです。 理由は3つです。

1つめ。前提を1つ減らせます。 ブラックが最良なのは「見上げられている」という条件付きです。その条件を確かめる方法がありません。

2つめ。外したときの損が小さいです。 ブラックは見下ろされると0.01まで落ちます。チャートは、いちばん条件が悪いときでも最良の色の52%のコントラストが出るので、致命傷になりません。

3つめ。見上げる向きでの差が小さいからです。 ブラック0.51に対しチャート0.47。この0.04を取るために、見下ろされたときの0.01を引き受けることになります。

「チャートは定番」という言い方には、計算上の裏付けがありました。 ただし理由は「目立つから」ではなく、どの向きでも大きく外さないからです。

ベイト系が下位なのは、保護色だからです

イワシやボラの色が下位に来るのは、計算の欠陥ではありません。 そう出るのが当然でした。

ベイトフィッシュの体色は、見つからないために進化したものだからです。

派手な魚は、なぜ食べられないのかで見たとおり、魚の体色には隠れるための仕組みが働いています。背中が暗く腹が白いという配置そのものが、その代表例です。

上から見られたときは、暗い背中が暗い水底に紛れる。下から見られたときは、明るい腹が明るい水面に紛れる。 カウンターシェーディングと呼ばれる仕組みで、まさに私が計算している「向きごとの背景の明るさ」に対応しています。

つまりベイトの色は、コントラストを下げる方向に最適化されています。 私の計算はコントラストが高いほど良いとしているので、下位に来て当然です。

ここに、ルアーの根本的な矛盾があります。

餌に似せれば、餌と同じくらい見つかりにくくなります。 本物のベイトが群れの中に1匹紛れているなら、それでいい。しかし1個のルアーを見つけてもらいたいなら、逆効果です。

「ナチュラル系は気付いてもらいにくい」という釣り人のあいだの言い方は、この計算と一致します。

ただし、見つかりにくいことが不利とは限りません。 ルアーカラーは効くのかで見たとおり、見つかりやすいものほど学習されます。ナチュラル系はスレにくいと言われますが、それも同じ理屈で説明できる可能性があります。

状況別に選ぶなら

1色に絞らず使い分けるなら、計算はもっと具体的な答えを出します。状況ごとの上位を並べます。

見上げられているとき

数字はコントラストです。

状況コントラストが高い順に1位2位3位
澄んだ水・浅いブラック 0.64ピンク 0.62ゴールド 0.60
濁った水ブラック 0.28ピンク 0.28ゴールド 0.27
遠い(経路5m)ブラック 0.12ピンク 0.11ゴールド 0.11

どの状況でもブラックです。 そして2位以下との差がほとんどありません。 腹が影になるので、暗い色の優位は小さくなります。

横から見られているとき

状況コントラストが高い順に1位2位3位
澄んだ水・浅いブラック 0.59ピンク 0.47ゴールド 0.41
濁った水ブラック 0.26ピンク 0.21ゴールド 0.18
濁った水・常夜灯ブラック 0.26ピンク 0.19ボラ 0.19

ここではブラックの優位がはっきりします。 背中と腹の両方が見えるので、全体が暗いことが効きます。

見下ろされているとき

状況コントラストが高い順に1位2位3位
澄んだ水・浅いパール 1.52チャート 1.20ゴールド 0.62
濁った水パール 0.34チャート 0.26ゴールド 0.13
遠い(経路5m)パール 0.11チャート 0.09ゴールド 0.05

逆転してパールとチャートです。 背景が暗いので、明るい背中が目立ちます。

まとめると

状況選ぶ色
表層を引く。魚は下から見ているブラック
中層を引く。横から見られるブラック
ボトムを探る。魚が上から見るパールかチャート
どれか分からないチャート

濁りや光源では変わりませんでした。 変えるべき条件は、魚が上にいるか下にいるかだけです。

逆に紛れさせたいなら

ナチュラル系が良いとされる場面もあるので、コントラストが小さい色も出しておきます。

魚が見る向きコントラストが小さい順に1位2位3位
見上げるレッドヘッドパールイワシ
横からパールチャートイワシ
見下ろすブラックボラレッドヘッド

向きによって、紛れる色も入れ替わります。 見上げる向きで紛れるレッドヘッドは、見下ろす向きでは3位です。

そして見上げる向きでは、どの色もほとんど差がありません。 1位のレッドヘッドが0.58、最下位のブラックが0.64。腹が影になるので、紛れさせようとしても差が出ません。

これは、時間帯や水の色でカラーを替えるという一般的な言い方とは、違う整理になります。 濁ったらアピール系、澄んだらナチュラル系、という分け方は、この計算からは出てきませんでした。

塗り分けるなら:チャートの背中に暗い腹

背中と腹を別の色にできるなら、単色より良くなります。 8色の候補で64通りを総当たりしました。

塗り分けいちばん悪い条件でのコントラスト(その場で最良の色を100%とした割合)180通りの平均
チャートの背中 + ブラックの腹69%85%
チャートの背中 + ボラ色の腹69%83%
パールの背中 + ブラックの腹68%91%
チャートの背中 + イワシ色の腹67%82%
(単色でいちばん良いチャート)52%76%

単色のチャートが52%、塗り分けなら69%まで上がります。

理屈は単純です。

背中は明るく。 見下ろされたとき、暗い背景に対して目立ちます。

腹は暗く。 見上げられたとき、明るい背景に対して目立ちます。

これは本物の魚と真逆の配置です。 ベイトフィッシュは背中が暗く腹が白い。見つからないためにそうなっています。 見つけてもらいたいなら、上下を入れ替えるのが計算上の最適解でした。

平均で選ぶならパールの背中にブラックの腹です。91%で最高でした。

側面も分けると、100%になります

側面を別の色にできるなら、さらに上がります。 横から見られたときに見えるのは側面なので、そこを独立させました。8色で512通りを総当たりしています。

塗り分け(背中/側面/腹)いちばん悪い条件でのコントラスト(その場で最良の色を100%とした割合)180通りの平均
パール/ブラック/ブラック100%100%
パール/ブラック/ボラ色99%100%
パール/ブラック/イワシ色97%99%
パール/ブラック/チャート93%98%

背中だけ明るく、側面と腹は暗く。 これで180通りすべてで、その条件の最良の色と同じコントラストになります。

理屈は3つの向きに対応しています。見下ろされたら明るい背中、横から見られたら暗い側面、見上げられたら暗い腹。 それぞれの背景に対して、最も離れた明るさになります。

本物のベイトフィッシュとは、背中と腹が逆です。 ベイトは背中が暗く腹が明るい。見つからないための配置です。 見つけてもらいたいなら、上下を入れ替えることになります。

クリアカラーをどう見るか

クリアは、コントラストを下げる方向の色です。

透けるということは、背景の光がルアーを通り抜けて目に届くということです。つまり見かけの明るさが背景に近づきます。

透過の割合を変えて計算しました。沿岸の水、水深1m・距離1m。

見る向きコントラスト(沿岸・水深1m・距離1m・昼光)、不透明同、3割透過同、6割透過同、9割透過
見上げる0.480.340.190.05
横から0.290.200.120.03
見下ろす0.600.420.240.06

どの向きでも、透けるほどコントラストが下がります。 9割透過なら、ほぼ背景と同じです。

だからクリアは、この記事の基準では最下位の選択になります。 見つけてもらうという目的には向きません。

しかし、それが狙いだとも言えます。 引用した釣り人の記事は、クリア系をシルエットをぼやけさせる、小さく見せるカラーとし、周りが釣れていない厳しい状況に強いとしています。満月の夜や常夜灯まわりでの使用も挙げられています。

この使い方は、私の計算と矛盾しません。 明るすぎる状況では、コントラストが高いことが不利になりうる。そのときに意図的に下げる手段として説明がつきます。

ただし、コントラストを下げたほうが釣れるという証拠は持っていません。 計算できるのは「下がる」ところまでです。

そして、透明がよく食われた実験があります (2026年9月追記)

この記事の基準に対する反例です。

岡本ら (2001)は、スズキ10尾を屋外の水槽に入れ、背景色を白・赤・緑・青に変えながら、白・赤・緑・青・透明の5色の擬餌を同時に投入しました。食い付きの総数は525回です。

擬餌の色食い付いた回数
138
透明130
108
77
72

透明が2位です。さらに、赤い背景と青い背景では、透明が1位でした。

岡本らは、他の色の結果はコントラストでおおむね説明できたとしています。ところが透明だけは説明できないと書いています。透明な物体は、どの背景色に対してもコントラストが小さいはずだからです。

挙げられている理由の候補は2つです。

1つめは、スズキのコントラスト閾値がヒトよりずっと低い可能性。ヒトには見えにくい透明な擬餌を、スズキは十分に視認できたのではないか、と。

2つめは、餌の履歴による学習。原文はこうです。スズキ稚魚の餌料生物となるアミ類、稚エビ、仔魚は色素が未沈着か非常に少ないため透明あるいは半透明であり、成長初期の摂餌によって透明の物体に興味を示すような学習効果の可能性

この記事は、見つけやすさをコントラストで測ってきました。 上の結果は、コントラストが最も小さい選択肢が2位に来たということです。私の計算では、クリアは最下位でした。

ただし、条件は大きく違います。擬餌は長さ19ミリ・直径4ミリのペレットで、泳ぎません。水深70センチの水槽で、背景は人為的に作ったビニールシートです。投げて引く釣りとは別の場面です

それでも、コントラストだけで見つけやすさを語れないことは、この実験が示しています。この記事の下のほうにある「コントラストだけで語ってよいのか」という節は、この実験によって具体的な裏づけを得たことになります

強鱗やフラッシュブーストに効果はあるのか

見る向きによって、効いたり効かなかったりします。

計算から言えることを整理します。

状況フラッシングの効き方
見上げられているほぼ効かない。腹の反射は下からの弱い光しか返さない(光る量は10分の1)
横から見られている中間(55%)
見下ろされている効く。背景が暗いので、明るくなるほど浮く

背景が暗い向きでは有利、明るい向きでは無意味に近い。 これが計算の答えです。

ただし、この計算が扱えていないものが2つあります。

1つめ。明滅そのものが動きとして検出される可能性です。 色が消える距離で、魚は何を頼りに餌を見つけているのかで見たとおり、視覚は動きにも反応します。一定の明るさより、点滅するほうが気付かれやすいかもしれません。 これは計算できていません。

2つめ。ホログラムは方向によって反射が変わります。 私の計算は平らな面として扱っていますが、実際は角度によって強く光ったり光らなかったりします。ルアーが回転することで、あらゆる方向に光を振りまく仕組みだとすれば、腹側からも光が届く可能性はあります。

だから「効果がない」とは言えません。 言えるのは、明るさのコントラストという基準だけでは、見上げられている状況での効果を説明できないということです。

コントラストだけで語ってよいのか

語れません。 ここは正直に書きます。

見つかることと、食うことは別です

自然界にない色に、なぜ魚は食ってくるのかで書いたとおり、捕食は検出識別の2段階です。この記事の計算は、1段目しか扱っていません。

そして色が消える距離で、魚は何を頼りに餌を見つけているのかで見たとおり、視覚が効くのは1m前後で、そこには側線も同時に効いています。

近づくほど、情報が増えます。 遠くでは明暗と動きしか分からなかったものが、数十cmでは形も、水の動きまで分かる。「やっぱり違う」と判断する材料が、近づくほど揃っていきます。

追ってきて反転する、バイトが浅い。そういう現象は、この2段目で起きているはずです。

ただし、色との関係は分かりません。 シーバスが接近後に見切る現象を、色と結びつけて調べた資料は見つけられませんでした。「不自然な色だから見切られる」という因果を示す根拠は持っていません。

逆の可能性もあります。 超正常刺激の枠組みでは、自然界にない刺激のほうが強い反応を引き出すことがありました。 イトヨは腹だけ赤い模型より、全身が赤い模型を強く攻撃します。近づいて不自然だと分かることが、必ず拒否につながるとは限りません。

見つかりやすいことには、代償があります

もう一つ、この記事の枠組みが扱えていないものがあります。学習です。

釣り人のあいだで「派手なカラーは寄せるがスレるのも早い」と言われます。この前半と後半は、別の話ではありません。同じことの裏表です。

魚が釣り具を学習することは、実験で確かめられています。マダイの稚魚を使った研究は、釣り具を避ける学習能力を報告しています。コイでは、1回の被釣獲経験で避けるようになることが示されました。

そして、忘れます。 同じ研究によれば、コイの学習した回避行動は7か月後には対照群の水準まで戻っていました。 別の研究をまとめた記述では、強化がなければ8日から55日で忘れるとされています。

ここが重要です。 この記事の計算は「見つかりやすさ」を最大化する方向で答えを出しました。しかし、見つかりやすいものほど、多くの魚に見られます。 見られた回数だけ、学習の機会が生まれます。

つまり、コントラストを上げることには代償があります。 短期的には見つかりやすく、長期的には覚えられやすい。

この代償は、私の計算には入っていません。 そして、入れる方法もありません。 その場所の魚が何回そのルアーを見たかを、私たちは知らないからです。

同じ場所に通う人ほど、この代償を負っているはずです。 これは推測ですが、筋は通っていると思います。

だから、この記事の答えは条件付きです

「初めてそのルアーを見る魚に対して、どの向きから見られても大きく外さない色」 が、この記事の答えです。それがチャートでした。

すでに何度も見られている場所では、答えが変わる可能性があります。 どう変わるかは、計算できません。

もう一つの穴:向きが分かりません

ここまでで、食うかどうか学習という2つの穴を書きました。もう一つあります。

結論は、見る向きだけで決まりました。 そしてその向きを、私たちは知りません。

「見上げられていることが多いはず」は推測です。表層をルアーが通るなら魚は下にいるだろう、という理屈だけで、確かめていません。 シーバスがルアーをどの位置から見ているかを調べた資料は見つけられませんでした。

向きが変われば、答えが入れ替わります。 見上げるならブラック、見下ろすならパール。前提が外れれば、いちばん悪い色を選ぶことになります。

そして、この結論が正しいかどうかは確かめられません。 冒頭に書いたとおり、釣果で検証するには投数が足りないからです。

まとめ:計算と通説を並べる

計算で出た答えと、釣り人のあいだで言われていることを並べます。

通説の出どころは3つです。 めしだ氏の記事(以下A)、アングラーズスタートの記事(以下B)、TSURI HACKの読者調査(以下C)。個人の書き手による記事が2つと、読者アンケートが1つです。学術的な調査ではありません。

コントラストが小さい色も並べます。 ナチュラル系が良いとされる場面があるので、背景に紛れる方向の答えも出しておく必要があると考えました。

状況計算から出たコントラストの大きい色計算から出たコントラストの小さい色良いとされている色出どころ一致するか
1色だけ選ぶならチャートレッドヘッド、イワシ、ボラコットンキャンディCどちらとも違う
表層を引く。魚は下から見るブラックレッドヘッド、パール、イワシ新月の夜はブラックA大きい色と合う
中層。横から見られるブラックパール、チャート夜はシルエットと反射が効くB大きい色と合う
ボトム。魚が上から見るパール、チャートブラック、ボラ見当たらず比較できず
濁った水向きで決まる。濁り自体では変わらない同左ゴールド系、チャートA、B違う
澄んだ水向きで決まる。澄み自体では変わらない同左ナチュラル系、クリア系A、B小さい色と方向は合う
向きで決まる。光源では変わらない同左ナチュラル系、クリア系A小さい色と方向は合う
夜(常夜灯あり)向きで決まる。光源では変わらない同左チャート、レッドヘッドAどちらとも違う
塗り分けられるなら背中パール、側面と腹ブラック背中を暗く、腹を明るく(本物のベイトと同じ)チャートバックパール(背中チャート、腹パール)B上下が逆

「良いとされている色」は、私が3つの記事から拾ったものです。 どれだけ広く共有されている考えなのかは分かりません。釣り人を対象に体系的に調べたわけではありません。

コントラストが小さい色の求め方

大きい色と同じやり方を、逆向きにしました。その条件で最良の色を100%としたとき、いちばん目立ってしまう条件でも何%に収まるかを見ます。

ルアーいちばん目立ってしまう条件でのコントラスト(その場で最良の色を100%とした割合)180通りの平均
レッドヘッド91%61%
イワシ92%62%
ボラ92%59%
ゴールド94%68%
チャート94%76%
ブラック100%67%
パール100%78%

紛れやすい順に、レッドヘッド・イワシ・ボラです。 平均で見ればボラが最も低く59%でした。

この3色は、コントラストの大きい表では下位でした。 同じことを裏返しに見ているだけです。ベイト系が保護色だという話が、そのまま数字に出ています。

ブラックとパールは100%です。 どちらも、条件によっては最も目立つ色になります。紛れさせたいなら、この2色は選べません。

大きく食い違ったのは、水の濁りと時間帯です。

通説では濁ったらアピール系、澄んだらナチュラル系という分け方が広く共有されています。ある記事は「デイでも濁り→ゴールド系」「ナイトでも澄み潮→ブラック」という組み合わせで釣果が分かれる、としています。

私の計算では、濁りも光源も順位を変えませんでした。 変えたのは見る向きだけです。

この食い違いは、私の計算が扱っていないものから来ている可能性があります。

1つめ。スレです。 通説は「澄み潮では目立つカラーがスレを招く」としています。私の計算は見つかりやすさだけを見ていて、学習を扱えていません。 澄んだ水で目立つ色が不利なら、それはコントラストではなく学習の話かもしれません。

2つめ。識別です。 濁ると見切られにくい、という言い方があります。これは検出ではなく識別の段階の話で、私の計算の外にあります。

3つめ。私の前提が誤っている可能性です。 向きだけで決まるという結論自体、「魚がどの向きから見ているか」を確かめずに置いた枠組みの上に乗っています。

塗り分けも食い違いました。 チャートバックパールは背中がチャート、腹がパールという配置で、定番として広く使われています。私の計算が出した最適解は、背中が明るく腹が暗いという逆の配置でした。

どちらが正しいかは、確かめる方法がありません。 冒頭に書いたとおり、釣果で検証するには投数が足りないからです。

一致した部分もあります。 暗い夜のブラック、シルエット重視という考え方は、計算と同じ方向を向いていました。

それでも、書く価値はあると思っています

根拠の種類が違うからです。

「あの色で釣れた」は、7回に1回は偶然でも起きます。一方、「濁った沿岸の1m先で、見上げられたとき、ブラックのコントラストは0.50でパールは0.08」は、条件を書けば誰でも再現できます。

確実に釣れる色は分かりません。 でも、確実に背景に溶ける色は分かります。 見下ろされている状況でのブラックが、まさにそれでした。コントラスト0.01です。

外さないための根拠としてなら、使えると考えています。

ただし、外さないというのは、見つけてもらうまでの話です。 そこから先、食うかどうか、覚えられて避けられるようになるかどうかは、この計算の外にあります。

最後に、私自身のこと

こんなに長々と書いてこんなことを言うのも何ですが、私自身はカラーをあまり重視していません。

ふだんよく使っているのはボラカラーです。 この記事の計算では下位の色で、私の他の使用カラーもインスピレーションで選んでいます。 それ以上の理由はなく、カラーはあまり重視していません。

それでも困っていません。 「良く釣れるルアー」の正体で計算したとおり、カラーの差を自分の釣行で確かめることはできません。確かめられない差を気にするより、投げている時間を増やすほうが確実だと考えています。

この記事は、カラーを選ぶ根拠がほしい人のために書きました。 何を選んでも同じだと言いたいのではありません。計算できることは計算した、というだけです。

そして計算の結論は、私自身の選択を支持していません。 それでいいと思っています。

確かめられていないこと

コントラストの計算に、人間の目の感度が入っています。 明るさを出すときに 0.2126R + 0.7152G + 0.0722B という重みを使っていますが、これは人間の目に合わせた係数です。緑に7割の重みがかかっています。魚が同じ重みを持っているかは分かりません。 魚は色をどう見ているのかで見たとおり、キンギョの長波長錐体は623nmで、人間より64nm長い波長にあります。

この点は、チャートという結論に直接効きます。 チャートは黄緑で、緑の重みが7割という係数の恩恵をいちばん受ける色だからです。魚の重み付けが違えば、チャートの評価は下がる可能性があります。

一方、ブラックとパールの順位は動きにくいはずです。 どの波長でも暗い、どの波長でも明るいという性質によるものだからです。色の付いたものの順位は、重みが変われば動きます。

フラッシングの明るさの倍率には根拠がありません。 実際のホログラムが拡散反射の何倍で光るのかを測った資料は見つけられませんでした。向きによって効き方が変わるという結論は変わりませんが、どこで変わるかは分かりません。

ホログラムを平らな面として扱っています。 実際は角度によって強く光ったり光らなかったりします。回転するルアーがあらゆる方向に光を振りまくとすれば、私の計算より腹側にも届くはずです。

クリアカラーの透過率は、仮に置いた値です。 実際の製品がどれだけ透けるかは測っていません。透けるほどコントラストが下がるという方向だけが言えます。

学習の効果は計算に入っていません。 見つかりやすさと、覚えられやすさを同時に扱う方法がないためです。岡本ら (2001) が透明の擬餌の理由として挙げた学習効果は、まさにこの計算に入れられない部分です。

そして、その実験では透明が2位でした。 コントラストで見つけやすさを測るというこの記事の基準に、正面から合わない結果です。 水槽の実験で条件は違いますが、基準そのものが十分でない可能性を示しています。

接近後に見切られるかどうかは分かりません。 色と結びつけて調べた資料がありません。

塗り分けは3面までしか扱っていません。 背中・側面・腹の3つです。頭と尾で色を変えるルアーもありますが、そこは扱えていません。 レッドヘッドのような前後の塗り分けは、全体を1色として計算しています。

下から来る光の割合(R)は分かりません。 腹がどれだけ暗くなるかを決める値ですが、正確に出すには後方散乱の係数という別のデータが必要で、いま使っている表には入っていません。0.05から0.35まで振って結論が変わらないことは確かめましたが、それ以上のことは言えません。

見える面を3通りに割り切っています。 見上げれば腹だけ、見下ろせば背中だけ、横からは半々。実際には斜めから見ることのほうが多いはずで、その場合は中間になります。

ルアーの立体形状は入っていません。 平らな面として扱っています。丸みのあるボディでは、同じ面でも場所によって受ける光が違うはずです。

比べたのは7色です。 レッドヘッド、チャート、イワシ、ボラ、パール、ブラック、ピンク。塗り分けの節では、ここにゴールドを足した8色で組み合わせを作りました。 実際のカラー展開はもっと多くあります。

発光塗料は計算に入っていません。 グロー系は自分で光を出すので、届いた光を返すという前提から外れます。ホログラムについては上で別に計算しましたが、発光塗料は扱えていません。

魚がどの向きから見ているかは分かりません。 結論の前提そのものです。

「夜は見上げられていることが多い」は推測です。 シーバスがルアーをどの位置から見ているかを調べた資料は、見つけられませんでした。

コントラストが高いほど食うという証拠はありません。 検出の話であって、識別と捕食は別です。

水の種類は4つに限っています。 河川と河口はJerlov分類の対象外なので、濁った沿岸で代用しています。

光源は3つです。 昼光・ナトリウム灯・白色LED昼白色。水銀灯やLED電球色は入れていません。

そして、この結論を釣果で確かめる方法はありません。

続けて読むなら

色の話はこの記事で終わりです。ここまでの5本が、この計算の材料になっています

使ったもの・参考文献