飛跡シミュレーター:ルアーはなぜその距離で落ちるのか
ルアーの重さ・初速・投射角・飛行姿勢を動かすと、飛跡と飛距離がどう変わるかを計算します。空気抵抗を入れた運動方程式を、ブラウザの中で数値的に解いています。
ルアーの重さ、投げる速さ、角度、そして飛行中の姿勢を動かすと、飛跡がどう変わるかを計算します。空気抵抗を入れた運動方程式を数値的に解いているので、真空中の放物線とは違う形になります。
姿勢の乱れ具合は仮定です。実際のルアーがどれくらい乱れるかを測ったデータはありません。このツールは飛距離を言い当てるものではなく、「何がどう効くのか」を目で見るためのものです。使い方は下の解説をご覧ください。
空気抵抗を速度の2乗に比例するとした運動方程式を、時間刻み1ミリ秒で数値的に解いています。抗力係数は、進行方向に正対するとき0.5、横を向いたとき1.1、リップは1.28としました(円柱および平板の標準的な値)。ルアーはテールを先端にして飛ぶものとし、姿勢が安定しているあいだリップは後流に入るとしています。ラインの抵抗は、竿先で0・ルアーで最大となる速度分布を長さ方向に積分して求めています。風は全長に効きます。リールとガイドの抵抗は、繰り出される糸を加速する反作用として入れました。飛行中の回転が生む揚力と、ラインの垂れ下がりは考えていません。
見方
動かすもの
ルアーの重さ——重いほど空気抵抗に打ち勝ちますが、同じ竿なら初速は落ちます。実際の釣りでは、この2つの綱引きで最も飛ぶ重さが決まります。
初速——竿とリールが与える速さです。既定値の30 m/s(時速108 km)は、シマノとダイワが公表している平均飛距離に合わせて決めました。8〜45 gの139通りに当てはめると、ルアーの太さやリールの抵抗の置き方によって29.5〜32 m/sになりました。決め方は解説の記事に書いています。
投射角——「最も飛ぶ角度にする」を押すと、その条件での最適角を探します。45度にはなりません。
飛行姿勢——このツールの中心です。1なら進行方向を向いたまま、0なら横を向いたまま飛びます。重心の位置そのものは入力になっていません。重心を後ろに寄せると姿勢が安定するという関係は確かですが、それが数値でどれくらいなのかを測った資料がないためです。ここでは、その結果である乱れ具合を直接指定する形にしています。
ルアーの全長——横を向いたときに受ける面積に効きます。飛行姿勢が1(乱れなし)のときは、全長を変えても飛距離はまったく変わりません。断面積に全長が入ってこないためです。乱れがあると効いてきて、乱れ70%では、70 mmが34.0 m、160 mmが22.3 mと11.7 m違います。長いルアーほど、姿勢を保てなかったときの損失が大きくなります。
ボディの太さ——ファット型か細身かです。ここがいちばん効きます。断面積は直径の2乗で増えるので、太さが2倍になると受ける力は4倍。26 g・初速30 m/sで計算すると、直径12 mmで70.2 m、20 mmで63.7 m、32 mmで52.5 mでした。同じ重さ・同じ投げ方でも、太いだけで18 m近く変わることになります。
リップの大きさ——ミノーの前についている、水を受けるための板です。飛行中は空気を受ける板になります。ただし効き方は姿勢によって大きく変わります(下記)。
風——水平方向にだけ働きます。
PEラインの号数——飛んでいるのはルアーだけではなく、ラインも一緒に引き出されています。空中の抵抗の係数は、同じタックルでPE3号と1.5号を投げ比べた実測記録に合わせて決めました。
横風——右からの風を正としています。飛距離はあまり落ちませんが、着水点が横にずれます。10 m/sの横風で10.4 mずれます。
リールとガイドの抵抗——スプールから糸が引き出されるとき、静止した糸を一気にルアーの速さまで加速する必要があります。その反作用がルアーを減速させます。この抵抗は直径の2乗に比例するので、空中の抵抗(直径の1乗)より太さの影響が急です。
この係数は、ベイトリールは外部の実測記録に合わせると1.0になりました。スピニングリールは、メーカーの公称値に当てはめても0から1のあいだで合い方がほとんど変わらず、値が決まりません。既定値は、その中ほどの0.5にしてあります。
画面の操作
飛ばしてみる——最初はルアーが出発点にいます。ボタンを押すと飛んでいき、通ったあとに飛跡が描かれます。実際の7割ほどの速さです。
ルアーの絵は、全長・ボディの太さ・リップの大きさ・飛行姿勢をそのまま反映します。スライダーを動かすと絵も変わるので、投げる前の姿を見てから飛ばせます。テールを先端にした姿勢で描いているのは、重心が後ろに寄ることでその向きが安定するからです。飛行姿勢を1より小さくすると、その分だけ機首が横を向いた絵になります。
飛び終わると「はじめに戻す」に変わります。押すと出発点の状態に戻るので、何度でも投げ直せます。
飛んでいる最中は、条件のスライダーを操作できません。途中で条件が変わると、その飛跡がどの条件のものか分からなくなるためです。値を変えたいときは、飛び終わるのを待つか、「止める」を押してください。
前回の飛跡——2回目からは、ひとつ前に飛ばしたときの飛跡が灰色の破線で重なります。条件を少し変えて投げ直すと、前回よりどれだけ伸びたか(縮んだか)がそのまま見えます。読み値にも差が出ます。
固定 / 自動——縦横の目盛りの取り方です。初期状態は「固定」で、条件を変えても目盛りが動きません。飛距離の変化を目で比べたいときはこちらです。「自動」にすると毎回いまの飛跡いっぱいに広げるので、飛跡の形を細かく見たいときに向いています。「固定スケールを今の飛跡でセット」を押すと、いまの飛跡がちょうど収まるように取り直します。
ライン——細い灰色の線が、竿先からルアーまで伸びているラインです。号数を変えると線の太さも変わります(実物は0.13〜0.29 mmでこの縮尺では見えないので、違いが分かるように強調しています)。まっすぐに描いています。このモデルがラインの長さを「竿先からルアーまでの直線距離」として計算しているためで、実物は自重と空気抵抗でたるみます。飛ぶほどラインが長くなり、それが抵抗として効いてくる様子が見えます。
上から見た図——下段は真上から見た飛跡です。横風があると着水点が横にずれるのが分かります。横のずれは飛距離ほど大きくないので、縦の縮尺を変えて拡大しています。
上下2つの図は、横軸をどちらも「竿先からの水平距離」にしてあります。横風があると、まっすぐ前に進んだ距離より竿先からの距離のほうが長くなります。表示している飛距離も後者です。
分かること
空気抵抗がどれだけ効いているか。26 g・初速30 m/s・41度で、空気抵抗を切ると92.6 mまで伸びます。入れると63.7 m。3割ほどが空気抵抗で失われていることになります。姿勢が乱れると、この損失が一気に膨らみます。
ルアーはテールを先端にして飛んでいること。重心が後ろに寄ると、重い側が先に進む姿勢で安定します。矢羽根と同じ理屈で、テールが前、ヘッドとリップが後ろという向きです。ラインがヘッド側に結ばれていることも、この向きを助けています。
このため、姿勢が安定しているあいだリップは後流に隠れます。リップの影響が姿勢によって変わるのはこのためで、計算でもそうなります。26 g・初速30 m/sの条件で、リップを0から8平方センチまで大きくしたときの飛距離はこうなりました。
| リップの面積 | 姿勢が安定(テールから飛ぶ) | 姿勢が乱れる(70%) |
|---|---|---|
| なし | 66.6 m | 26.2 m |
| 1.5 平方cm | 63.7 m | 25.1 m |
| 3 平方cm | 61.1 m | 24.2 m |
| 8 平方cm | 53.9 m | 21.4 m |
安定していればリップの差は12.7 mですが、姿勢が乱れると4.8 mしか違いません。姿勢が乱れた時点で、リップの有無を議論する意味がなくなるほど大きな損失が出ている、ということです。
姿勢が飛距離を決めていること。全長129 mm・直径20 mmのルアーだと、進行方向を向いて進むときの断面積は約3.1平方センチ、横を向いたときの側面積は約25.8平方センチで、8倍以上あります。抗力係数の違いも掛けると、受ける力は16倍ほどになります。ルアーの中でオモリが前後に動く「重心移動システム」が存在するのは、この差を避けるためです。メーカーごとの戻し方の違いと、着水後にあおる必要があるかどうかは重心移動システムについてにまとめています。
最適角が45度でないこと。空気抵抗があると、最適角は40度前後に下がります。さらに軽いルアーほど、また太いルアーほど、最適角は低くなります。初速30 m/sで計算すると、10 gなら37.5度、26 gなら41.0度、40 gなら42.0度。太さでも変わり、直径12 mmなら41.5度、32 mmなら39.5度でした。空気抵抗に負けやすいものほど、滞空時間を稼ぐより早く前に進めたほうが得、ということのようです。
弾道係数——表示している値は、質量を「抗力係数×面積」で割ったものです。この1つの数字が大きいほど空気抵抗に強い、という目安になります。姿勢を乱すとこの値が一気に下がるのが見えると思います。
着水時の速さ——水面に届く直前の、ルアーの速さと、水面に対する角度です。26 g・初速30 m/s・41度では、秒速20.1 m (時速72 km) で、水面に対して54度の角度で着水します。空気抵抗を切ると秒速30.5 mで、初速とほとんど変わりません。空気抵抗が、飛んでいるあいだにルアーを3分の2ほどの速さまで落としていることになります。着水の直前にスプールを指で押さえるフェザリングは、このモデルに入っていません。フェザリングをすれば、実際の着水はこれより遅くなります。
このモデルの限界
姿勢の乱れ具合は仮定です。重心が後ろにあると姿勢が安定する、という関係は確かですが、それが数値でどれくらいなのかを測ったデータを見つけられませんでした。このツールで「このルアーは何m飛ぶ」を当てることはできません。
抗力係数は代表値です。進行方向に正対するとき0.5、横を向いたとき1.1、リップは1.28としました。横向きの値は円柱に対する流体力学の標準的な値で、飛行時のレイノルズ数(初速30 m/s・直径20 mmで約4万)もその範囲に入ります。リップの値は、流れに正対した平板の標準値です。
形はボディの太さと全長だけで表しています。実際には、同じ太さでも丸みの付け方や肩の張り方で抗力係数は変わりますし、フックやリングも抵抗になります。ここではそれらを一定として扱っているので、形の違いを完全には表せていません。
リップが後流に隠れる度合いは仮定です。安定飛行中はリップの抗力が4分の1になるとしました。後ろに流れるほど影響が小さくなるのは確かですが、どこまで小さくなるかは測ったデータがありません。
回転と揚力は考えていません。実際のルアーは飛行中に回転し、その回転が揚力を生むこともあります。ここでは無視しています。
ラインの垂れ下がりは入っていません。ラインの空気抵抗と、リールとガイドの抵抗は入れていますが、ラインは竿先からルアーまでまっすぐ張っているものとして計算しています。
つまりこれは、飛距離を予測する道具ではなく、何がどう効くのかを見るための道具です。
仕組み
計算の考え方はルアーが飛ぶ距離を式で書くの記事で解説しています。