湾と海の共振シミュレーター:入口の形で、潮は増えも減りもする
湾や海の形を変えると、外の海の潮がどれだけ増幅されるか、あるいは弱められるかを計算します。入口が広い湾では共振で潮が大きくなり、入口が狭い海では潮がほとんど入らなくなります。有明海や日本海の値を入れて確かめられます。
湾や海の形を変えると、外の海から来た潮が、中でどれだけ大きくなるか、あるいは小さくなるかを計算します。
2つのモードがあります。「入口が広い湾」は、湾の長さと水深で決まる共振で潮が増幅される計算です。「入口が狭い海」は、瓶の口のようにせまい入口でつながった海に、潮がどれだけ入るかの計算です。使い方と、どこまで当てになるかは下の解説をご覧ください。
見方
入口が広い湾
湾の長さ・平均水深・摩擦の弱さ(Q値)・湾口と湾奥の幅の比を動かすと、湾奥の潮差が湾口の何倍になるかが出ます。
上の図は湾の縦断面で、満潮と干潮のときの水面の形を誇張して描いています。下の図は、いまの水深とQ値のまま湾の長さだけを変えたときの増幅率で、赤い点がいまの長さです。
計算の考え方と、有明海やファンディ湾の値での確かめは、湾の形が潮差を決める:共振と摩擦を計算するに書きました。
入口が狭い海
海の面積と、入口(海峡)の幅・深さ・長さ、摩擦の弱さを動かすと、その海の固有周期と、外の海の潮のうち中に入ってくる割合が出ます。
図の横軸は外の潮の周期、縦軸は中に入る割合です。縦軸は対数目盛りで、1倍より上なら増幅、下なら弱まることを表します。赤い点は、半日周期の潮(12.42時間)と1日周期の潮(約24時間)の位置です。
固有周期より速い周期で揺すられると、海の中は外と逆向きに上下します。出力の「半日周期の潮の向き」は、そのことを表しています。
試してみてほしいこと
1. 「共振する組み合わせ」と「小さく深い湾」を比べる
「入口が広い湾」で2つのボタンを押し比べてください。湾の長さが固有周期と潮の周期を合わせる長さにあると、増幅率が6倍を超えます。小さく深い湾では、ほぼ1倍です。
2. 日本海で、半日周期の潮と1日周期の潮を比べる
「入口が狭い海」で「日本海」のボタンを押してください。固有周期は2日以上になり、半日周期の潮は外の5%ほどしか入りません。1日周期の潮は20%あまり入ります。日本海側で1日1回の満ち引きの割合が大きくなる理由を、この差で説明できます。
3. 日本海の入口を広げる
続けて「入口を大きく広げた日本海」を押してください。固有周期が半日周期の潮に近づいて、潮は弱まるどころか増幅されます。入口の幅を少しずつ広げていくと、「弱める」から「増幅する」へ移り変わる様子が見られます。
このモデルの限界
どちらのモードも、理想化した計算です。 実際の湾や海の形は、長方形の箱や、瓶と口のような単純な形ではありません。
入口が狭い海のモードは、海の水面が全体で一様に上下すると考えています。 海が大きく、潮の波の長さと比べて小さいとは言えない場合(日本海もその例です)には、粗い近似になります。
「日本海(4つの海峡をまとめた目安)」の値は、計算のための置き換えです。 4つの海峡の「断面積 ÷ 長さ」を足し合わせた値と同じになるように、入口を1つにまとめています。津軽海峡と宗谷海峡の長さは確かな値がなく、仮に置いています。
Q値は物理定数ではありません。 実測に合わせるためのつまみです。理由は湾の形が潮差を決めるに書きました。
海の中で直接起きる潮は入っていません。 月と太陽の力が海の中の海水に直接はたらいて起きる潮は、どちらのモードにも入っていません。外から入ってくる潮だけを計算しています。
計算について
入口が広い湾のモードは、Godin (1993)の式(24)(摩擦を複素数の波数で入れた四分の一波長の共振)に、湾の幅の絞りによる増幅(グリーンの法則)を掛けたものです。
入口が狭い海のモードは、ヘルムホルツ共振の標準的な式です。固有角周波数を √(重力加速度 × 入口の断面積 ÷ 入口の長さ ÷ 海の面積)とし、摩擦を入れた強制振動の式で、外の潮に対する割合を出しています。
入る割合 = 1 / √((1 − r²)² + (r / Q)²) r = 固有周期 ÷ 外の潮の周期
日本海のボタンの値は、日本海の面積(約100万 km²、国際深海科学掘削計画の資料)と、対馬海峡の寸法(Takikawa ら 2005)、津軽海峡と宗谷海峡の寸法(Kida ら 2016)から決めました。